はじめに
新年、明けましておめでとうございます。学長の西田です。年頭にあたって新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は一昨年に続き、全学をあげて新型コロナウイルス感染拡大防止を図りつつ、大学としての活動を最大限遂行することに努め、何とかそれを完遂した1年でした。本学構成員の皆さま、そして地域の方々をはじめとする関係者の皆さまに、多大な努力、ご協力、あるいはご支援をいただきました。皆さまに深く感謝申し上げます。この場で全ての内容を挙げることはかないませんが、そのいくつかはWEBページに公表した「年頭所感」に記しましたので、ご覧ください。
これから入試や卒業式・入学式といった重大イベントを控える今、感染力がより強いと言われるオミクロン株への置き換わりなどにより、新型コロナウイルスの新規陽性者が急速に増えつつあることに大変強い危機感を覚えます。国や沖縄県の対処方針も、再び強化される方向に舵が切られています。本学においても危機対策本部から必要な注意喚起を行ってまいりますが、いずれにしても、マスクの着用、手指消毒、密の回避、換気などの基本的な対策は重要ですので、皆さまにおかれましては改めてこのことの重要性を認識いただき、実施いただくようお願いいたします。
1.大学全体の動き
それでは、本年4月から6年間の新たな中期目標期間が始まる年の年頭にあたり、昨年を振り返るとともに、今後とくに重要と考えられる事柄についてお話します。
昨年6月に、第3期中期目標期間における4年目終了時点の評価結果が公表されました。各項目で「順調」ないしそれ以上の評価を得ることができました。この評価結果は、本学構成員の尽力の成果であり、構成員各位に敬意を表したいと思います。この結果は、第4期における運営費交付金の予算額に影響を与えるなど、今後の大学運営にとってプラスになるものと心強く思っています。
本年4月からは、第4期の中期目標・中期計画期間が始まります。新たな目標・計画の策定に当たり、すでに策定していた長期ビジョンに基づき、「中期将来ビジョン」を策定しました。このビジョンを基として、文科省から提示された中期目標大綱等に沿う形で「第4期中期目標・中期計画」の素案を策定しました。第3期まで年度ごとに行われていた文部科学省による点検・評価は無くなりますが、各大学における自己点検や評価結果の可視化が必要とされています。本学においても、中期将来ビジョンに対する自己点検・評価を毎年度実施し、これらの結果について公表することにいたします。計画達成に向け、力を合わせて活動を展開していければと思いますので、よろしくお願いいたします。
2.新型コロナウイルス感染症対応
新型コロナウイルス感染症対応に関しては、何よりも、個々の教職員と学生の皆さまの工夫と努力で、厳しい状況を何とか乗り越えてきました。皆さまの努力に感謝いたします。また、医療面から感染症対応の最前線に立ち続けている病院関係の皆さまに、心から敬意を表します。
昨年行った取り組みのひとつに、ワクチンの大学拠点接種があります。本学の病院や医学部を中心とした全学の教職員による協力体制のみならず、生協の協力も得ての実施でした。本学の底力を実感しました。
新型コロナウイルス感染症への厳しい対応はまだまだ必要です。感染拡大の状況に応じた対策をとりつつ、学修機会を最大限確保するための取り組みを進めていただければと願っています。
3.教育活動
コロナ禍の中であっても、教育面において新たな展開がありました。まずは、大学院教育の向上に向けての組織改革です。昨年、文部科学省から大学院地域共創研究科の設置について了解が得られ、いよいよ今年4月から活動開始です。目的に共鳴してくれた意欲と能力のある大学院生が入学し、活発な教育研究活動が開始されるものと大いに期待しています。
学部教育では、力を入れてきたデータサイエンティストの養成履修カリキュラムが、文部科学省のリテラシーレベルに認定されました。さらに大きく展開できるよう、大学としても強力に支援していきます。
4.研究活動
昨年も優れた研究成果が数多く公表されました。それらの幾つかの解説は、本学のWEBページでもご紹介していますが、掲載数が一昨年の倍以上の件数となっています。この増加が、研究活動がより活発になっていることの反映だとすれば、大変嬉しいことです。
また、JSTの共創の場形成支援プログラムに採択された課題など、特色ある研究を進めるプロジェクトが順調に進展しています。さらに、文部科学省やAMED等のプログラムへの採択も続いています。文部科学省のコアファシリティ構築支援プログラムにも採択されました。これらを契機に、研究のさらなる活性化が進むものと期待しています。
5.社会貢献等の活動
昨年は、産学連携活動や研究成果の地域社会への還元を通じて、持続可能な発展の実現に貢献することを目的として、地域の様々な組織と連携協定を結ぶことができました。これらの協定に基づき、多様な活動展開ができればと考えています。
また、製薬企業へのヒト組織提供を通じて再生医療等製品の開発の加速を目指し、琉球大学病院みらいバンクと企業が協働してプロジェクトを推進できる体制を整え、実際の運用が始まりました。これも今後が楽しみです。
SDGs推進についても、多くの組織や人々と連携して様々な取り組みを進めています。カーボンニュートラルに向けても、足元を見つめつつ、大学らしい取組、貢献を進めていければと思います。
6.活動の強化と発展を支える体制整備
西普天間地区への医学部及び病院のキャンパス移転については、病院の建設工事に着手しており、医学部関係施設についても、実施設計等が進もうとしています。優れた「沖縄健康医療拠点」の形成に向けて、努力を続けていきたいと思います。
また昨年は、工学部で初の女性教授が誕生するなど、5名の女性教授が誕生しました。これは、一昨年度に病院で初の女性教授が誕生したことに続く朗報であり、多様性の高いキャンパス実現に向けた大きな一歩だと考えております。引き続き、女性や外国人などが活躍できるキャンパス、またハラスメントをしない・させないキャンパスに向けての歩みを促進したいと思います。
これから特に力を入れて全学的に展開したいのは、「デジタル・キャンパス」に向けた取り組みです。昨年、総合情報処理センターを情報基盤統括センターに改組しましたが、この機能強化をさらに推し進めます。千原キャンパスの情報ネットワークの更新については、補正予算で措置されましたので、「デジタル・キャンパス」に向けて勢いよく前進できるものと確信しています。
おわりに
急速に変化する時代にあって、社会の大学に対する期待はますます大きくなっていると考えています。新型コロナウイルスへの対応が重要となる状況は当面続くと思われますが、本学への期待に応えるためには、コロナ対策をしっかりと継続しつつ、本学が長期ビジョンとして掲げる「地域とともに豊かな未来社会をデザインする大学」「アジア・太平洋地域の卓越した教育研究拠点となる大学」への歩みを強めていく必要があります。
全地球的な気候変動を食い止めるべく、二酸化炭素排出削減をいかに進めるか、ウェルビーイングを重視して経済的な格差拡大をどう解消するのかなど、難しい問題が目白押しの時代になっています。しかしながら、この時代に立ち向かっていく、自ら考えて行動できる人材を育成することは、現代の大学にとってやりがいのある、きわめて大事な責務であると考えています。本学がこの役割をしっかり果たしていけるよう、構成員の皆さまと一緒に頑張っていきたいと思います。
最後になりましたが、本年が皆さまにとって良い年になることを祈念し、新年の挨拶とさせていただきます。
2022年(令和4年)1月11日
琉球大学学長 西田 睦