研究成果

サンゴ礁島嶼における水循環と統合的水資源管理のための 環境教育ツール(ボードゲーム)を開発

 オープンアクセスの学際的電子ジャーナル「Sustainability」誌に、サンゴ礁島嶼における水資源の持続可能な利用を考えるための環境教育ツールに関する論文が掲載されました。多様なステークホルダーとの協働によるボードゲーム開発と実践の研究成果です。この研究は、「水の環でつなげる南の島のくらし」プロジェクト(国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST)の平成29年度「科学技術コミュニケーション推進事業未来共創イノベーション活動支援」代表:理学部 新城竜一)及び、総合地球環境学研究所のLINKAGEプロジェクト(「陸と海をつなぐ水循環を軸としたマルチリソースの順応的ガバナンス:サンゴ礁島嶼系での展開」代表:総合地球環境学研究所 新城竜一)のなかで、持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development: ESD)の教材開発を目的として行われました。

 

<発表概要>
・背景・目的:サンゴ礁島嶼地域における資源問題を解決するためには、生存基盤の最たる資源である水循環の理解が不可欠です。水資源管理は、島の多様な産業やサンゴ礁の生態系と密接に関係しています。そこで、持続可能な資源管理を効果的に推進するために、幅広い世代に向けた環境教育・コミュニケーションツールとして、ボードゲーム「すいまーる」を開発しました(図1)。

・コンセプト:ゲームのコンセプトは、「水は正しく使えば、いつまでも使える」というもので、地下水脈を主な水資源とする島を想定したボードゲームです。ゲームはロールプレイング方式で、プレイヤーは、野菜農家、畜産農家、漁業者、観光業者に扮し、それぞれの生活向上を目指しながら、皆の共有財産である水資源を枯渇させないように使います。さらに、プレイヤーは協力しながら、将来の世代のために保全する必要があります(図2)。

・開発プロセス:このゲームは、研究者、行政職員、市民団体、学生など、多様な立場の人々が関与し、学際的なプロセスで開発・実践 されました(図3 )。現実世界の複雑な課題を限られた時空間のなかに抽象化しなければならなかったことで苦労しましたが、多世代の人たちと学び合いながらつくることができました。

・多良間小での授業:本研究では、多良間島の小学校の児童(5年生)に対し、ボードゲームを用いた授業を実践しました。その結果、児童らは、水資源の持続的な利用に「協力」が重要であることを学びました。また、資源管理の方法として「みんなで話合って決める」というボトムアップ型と「村長と議会が決める」というトップダウン型の2つの意見が示されました。

・今後の展開:本研究は、サンゴ礁島嶼で持続可能な水資源管理を推進するための効果的な環境教育ツールとして活用できる可能性を示しました。今後は、別の南の島の、水以外の共有資源についても、それぞれの島の実情とステークホルダーに適応した内容で作成し、ボードゲームが効果的な環境教育ツールになり得ることの一般性を証明してゆきたいと考えています。

・ダウンロード(無料):この教材資料(β版)は、次のURLからダウンロードできます。
 http://mizunowa.skr.u-ryukyu.ac.jp/downloads.html

作り方や使い方について、ご不明な点がございましたら、お気軽に問い合わせ先にご連絡ください。時間を調整して、出前ワークショップを実施することもできます。

 


図1. ボードゲーム「すいまーる」


図2.サンゴ礁島嶼における水循環の統合的資源保全のための環境教育ツール(ボードゲーム)のコンセプト


図3.ボードゲーム「すいまーる」の開発と実践の経緯(年表)

 

<論文情報>
(1)    論文タイトル:Development and Application of an Environmental Education Tool (Board Game) for Teaching Integrated Resource Management of the Water Cycle on Coral Reef Islands

(2)    雑誌名:Sustainability

(3)    著者名:Miyuki Shimabukuro, Tomohiro Toki, Hitoshi Shimabukuro, Yoshiaki Kubo, Soyo Takahashi and Ryuichi Shinjo

(4)    島袋美由紀(琉球大学地域共創研究科学生)、土岐知弘(琉球大学理学部)、島袋 仁(読谷村役場企画政策課)、久保慶明(関西学院大学総合政策学部;元琉球大学人文社会学部)、高橋そよ(琉球大学人文社会学部)、新城竜一(総合地球環境学研究所、琉球大学理学部)

(5)    DOI番号:10.3390/su142416562

(6)    論文アクセスURL: https://www.mdpi.com/2071-1050/14/24/16562