お知らせ

2020年 学長年頭挨拶

~2020年、琉球大学は開学70周年を迎えます。~
Island wisdom, for the world, for the future. 


1.はじめに

2020年、あけましておめでとうございます。年末年始の休暇を経て、心身ともにリフレッシュして「仕事始め」を迎えておられることと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

本日は、「大学を取り巻く状況」をお話したあと、第3期中期目標期間も後半に入った昨年における本学のおもな取組の成果と今後について、大きく「教育・研究・社会貢献等の活動の強化」と「活動強化と発展を支える体制整備など」に分けてお話しいたします。

2.大学を取り巻く状況

ICT化に伴って急速に「知識基盤社会」「高度情報社会」へと向かいつつある世界のなかで、日本社会は、大きく人口が減少するという局面を迎えています。この局面において、日本社会の持続的発展に果たすべき大学の役割は大きく、また変化・拡大しつつあります。一方、人類社会の近年の著しい発展の基盤となってきたのは、学術研究とそれに基づく教育・学修です。800年を超えるuniversitasの伝統を受け継ぐ高等教育機関としての大学の本質を、しっかり見据えねばなりません。本学は、この大学の本質を堅持しつつ、時代と地域の要請に応えて的確に自己変革していく必要があります。

 

時代の流れを確認するため、人口減少、少子高齢化の問題に少し深入りしてみたいと思います。総務省の平成17年度国勢調査に基づく推計によると、日本における人口は、中位推計で2050年頃に1億人を下回り、2100年には5,000万人を下回っていると予測されています。工業化による社会の発展にともなって人口はいったん増加し、そののち減少局面に入るというこの流れは、日本に限った話ではなく、世界の各国に共通のものです。東南アジア諸国やアフリカ諸国はまだ増加局面にあるので、世界人口はあと100年くらいは増えますが、そののちは減少に向かうと予測されています。日本は、急速な人口減を経験する最初の国ということです。

人口が減少するなかでは、社会の持続可能性を確保する必要があります。持続可能性の確保のためには、生産者の確保や生産性の向上が求められます。これらのためには、ダイバーシティやイノベーションが重要となります。

イノベーションとは、経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合することで生まれるものであることと、経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは定義づけしています。進化学者であり科学ジャーナリストでもあるマット・リドレーは、より広い視点から、「アイデアの交流」が文明の加速的発展のカギであると語っています。多様な学問の蓄積されている場が大学ですから、異質なアイデアの効果的な交流ができる場が大学であることは明白です。大学こそ、異分野間で、そして社会の多様なアクターと、アイデアの交流・触発が起こせる場所であり、イノベーションを推進することのできる場所であると言えます。我々はそのような場を担っているのであり、沖縄に琉球大学が存在することの意義をあらためて自覚する必要があると考えています。

さてここで、琉球大学がこれまで実施してきた活動について、昨年、外部から受けた評価のいくつかをご紹介いたします。まずは、文部科学省が実施した「平成30年度国立大学法人等の業務の実績」に関してです。琉球大学は総合的に「順調」、ふた桁に達する活動が「注目される」と評価されました。また、「THE(Times Higher Education)世界大学ランキング日本版2019」では、一昨年より10位アップの総合89位にランクインしました。日本経済新聞社が実施した「大学の地域貢献度に関する全国調査2019」では、8位にランクインすることができました。7年前にエントリーをして200番以下のランク外であったものが、190位、41位と次第に上昇して、ようやくここまで来ました。地域貢献大学として皆で地道に努力をしてきたことが評価された結果だと考えています。

3.教育・研究・社会貢献等の活動の強化

では次に、概観的に昨年のおもな取組の成果と今後について述べます。

教育活動の向上を図る取組:文部科学省「数理・データサイエンス教育の全国展開」事業の取組協力校に採択され、学内への展開および地域への展開を図りつつあります。また、2018年発足の新学部である人文社会学部および国際地域創造学部では教育研究活動が進展しており、工学部ではグローバル・エンジニアプログラムが開始されます。数多くの教育活動とともに、これらの成功裏の展開を期待しています。

教育のグローバル化を推進する取組:留学生と国内学生との協働で学修する「グローバル津梁プログラム副専攻」が開始されました。また、世界展開力事業「COIL型教育を活用した太平洋島嶼地域の持続的発展に資するグローバルリーダーの育成」が採択され、その活動を展開しています。さらに、ISEP(International Student Exchange Programs)に加盟し、学生海外派遣先の候補がより充実しつつあります。こうした取組を通じて、教育のグローバル化をさらに進めたいと思います。

特色ある研究の推進:概算要求研究事業の「亜熱帯島嶼の時空間ゲノミクス―環境・微生物・家畜・ヒトの相互作用から疾病の内因と外因を探る」など、特色ある研究が展開されています。また、ゼロエネルギーハウス(ZEH)実験棟による実証実験が開始されました。JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム」への申請が、高競争率を勝ち抜いて採択されたことも嬉しいことです。

研究支援体制の強化、産学官連携推進体制の整備:沖縄地域の諸研究開発組織と、分析機器等の相互活用を促進するため、本学が中心となって「おきなわオープンファシリティネットワーク」を設置いたしました。また、研究推進機構および地域連携推進機構の改組と「琉球大学イノベーション・イニシアティブ(仮称)」の設置に向けて準備を推進しています。来年度からは、より強力な体制で産官学連携推進ができればと思います。

地域連携・地域貢献に関する取組:「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」いわゆるCOCとそれを引き継ぐCOC+事業において、実に多様な地域連携・地域貢献活動を展開してきました。様々な工夫をして着実な継続ができればと思っています。また、学術面から首里城を再興するのための「琉球大学首里城再興学術ネットワーク(仮称)」設立について検討を進め、昨年12月22日には緊急学術シンポジウムを開催しました。たいへん有意義なシンポジウムでした。首里城再興に、学術面からしっかり貢献したいものです。

病院のガバナンス改革などの取組:平成30年6月に施行された改正医療法および同法施行規則の趣旨を最大限に尊重し、病院のガバナンス改革を推進するために、琉球大学医学部附属病院を琉球大学病院として設置するための検討を進めています。

キャンパス移転に向けた取組:2024年度末の医学部および附属病院の西普天間住宅地区跡地への移転完了を目指して、実施設計を進めており、来年度からいよいよ建設工事に着工する予定です。大学として全力で取り組んでいきたいと考えています。ぜひ、優れた沖縄健康医療拠点の形成に向けていければと思います。

附属学校改革:附属学校統括および専任校長の配置に加え、児童・生徒へ「安全で安心できる給食」を提供するための附属学校給食棟の整備を進めています。こうした新たな体制や施設整備で、附属学校の活動の向上が期待されます。

国際連携に関する取組:この間、本学は海外の大学等との交流協定締結を精力的に推進し、その数は100を超えるところまできました。この条件を活かし、研究者や学生の海外との交流などが着実に広がっています。協定に基づく国際交流・連携をさらに活発化することが今後の課題であると考えています。

4.活動強化と発展を支える体制整備など

つづいて、本学の活動強化と発展を支える体制整備などについてです。

第3期中期目標・中期計画の達成に向けて:今年度で第3期中期目標期間の4年目が終了するため、2020年度は文部科学省の国立大学法人評価委員会に4年目終了時の達成状況等を報告することとなります。よい報告が出来るようにしなければなりません。鋭意、準備を進めていますので、全学の協力をよろしくお願いいたします。

第4期中期目標・中期計画(素案)の策定に向けて:上述した第3期中期目標期間における4年目終了時の達成状況等の報告を踏まえ、第4期中期目標・中期計画(素案)の策定に向けて検討することが、2020年度の重要な課題であると認識しています。全学で知恵を出し合っていければと思います。

財務基盤の強化および予算に関する取組:今年度は部局等への基盤配分経費、とくに教育関連経費の確保に努めました。各部局においては、これを有効に活用していただいているものと思っています。外部資金の獲得に向けては様々な取組を進めています。つい先日、研究クラウドファンディングの第1号が寄附目標を達成し、研究が開始されました。これをきっかけに、成功事例が続くことを願っています。また、ネーミングライツパートナーの第1号として株式会社全保連と協定を結びました。これによって、大学会館の愛称が「全保連ステーション」となっています。この流れのなかで、同社からは学生奨学金の提供もいただいています。こうした動きをさらに強めていきたいと思います。

施設整備に関する取組:全学の教育研究施設整備をより柔軟かつ効果的に行うため、「琉球大学教育研究施設整備方針」を策定しましたが、さらによいものとするよう更新を進めています。また、学生寮の再生整備を数年計画で進めており、一部については今年2月に完成を予定しています。財政的には厳しいなかですが、構成員が少しでも過ごしやすい良いキャンパスにするよう努めていきたいと思います。

人事給与マネジメント改革:昨年2月に文部科学省から「国立大学法人等人事給与マネジメントに関するガイドライン」が示されたことを受け、昨年末に「国立大学法人琉球大学における人事給与マネジメント改革に関する基本方針」を策定しました。策定に向けての教員の皆さんの熱心な議論に感謝します。これに基づき、本年4月より業績評価制度および年俸制を導入すべく、準備をしています。各学部等におかれましても、入試関連業務等で多忙な中ですが、教員活動の活発化のためにも、円滑な導入に向けた準備をよろしくお願いいたします。

「国立大学改革方針」への対応:昨年6月、文部科学省から「国立大学改革方針」が示されました。第3期中期目標期間後半の取組の加速と、第4期中期目標・中期計画の策定に向けた議論のキックオフとして、改革の方向と論点を提示したものです。本学においても、文部科学省との徹底した対話に向けて、鋭意、準備を進めています。

広報の強化:今年度より、本学の公式WEBページを、スマートフォンでも見やすいモバイルフレンドリーなものにリニューアルしました。掲載内容も一新しています。また、学長との記者懇談会も、より多様な本学の活動を話題にするようにしていますので、社会に伝えたい学生のよい活動などを、学部等からどしどしご紹介ください。引き続き情報発信を強化したいと思います。

多様性の高いキャンパスに向けて:文部科学省補助事業である「令和元年度ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(先端型)」の採択を受けて、「女性教員海外調査派遣制度」などを実施しています。また、教員ポスト戦略的再配分(重点改革推進枠)を活用した「自然科学系女性教授限定公募」によって、附属病院初の女性教授が誕生しました。すばらしいことだと思います。2020年度も新たに教授1名分のポストを用意して、多様性の高いキャンパスに向けた動きを推し進めたいと考えています。

ハラスメントをしない、させないキャンパスに向けて:これまでに整備された防止体制のさらなる改善を進めたいと思います。また、「ハラスメントをしない、させないキャンパス」にするという機運を高めるため、着実に手を打っていきます。

SDGsに関する取組:本学でも国連が設定したSDGsに関する取組を進めていきたいと考え、「琉球大学におけるSDGsへの取組みについて」の学長メッセージを発信し、活動を開始しました。「特色ある研究の推進」のところでも述べたように、さっそくJSTの「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム」に本学からの提案が高倍率のなか採択されました。このプロジェクトの推進をはじめ、多様な取組の推進を図ります。皆さまもどうかいろいろアイデアをお考えいただければと思います。

開学70周年記念事業の取組:「60年誌」にまとめられた以降10年間の本学の活動の記録となる「70年記念誌」の編纂、学生への奨学事業や教育研究・国際交流奨励事業の継続と拡充のための基金の充実等を目指す開学70周年記念事業の取組を強化いたします。これからの10年、そしてその先の琉球大学を考えるためにも、よい記念の事業ができるよう、ご協力をお願いします。

学長の「トップセールス」および地域への貢献:就任挨拶訪問を通じて、県内の国家機関・自治体・諸団体・諸企業等の約140組織に「トップセールス」を行いました。その際に、「採用した琉大生、よく頑張っている」、「琉大が真剣に地域貢献のための努力をしていることがよく分かった」などの声をいただき、学長としてたいへん励まされ、また嬉しく感じました。この場をお借りして、この嬉しさを教職員の皆さまと共有したいと思います。

5.おわりに

人口減少が進み、国の財政も厳しい時代ではありますが、琉球大学の使命は明確です。その使命の達成のために、「学生にとっては学び甲斐のある大学」、「教職員にとっては働き甲斐のある大学」、「地域にとっては頼りがいのある大学」を目指して、力を合わせて頑張りましょう。

最後に、皆さまとご家族にとって今年が実り多い年になるよう祈念して、私の年頭の挨拶を締めくくりたいと思います。

2020年(令和2年)1月6日
第17代学長 西田 睦

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