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琉球大学大学院理工学研究科 博士後期課程の木村 ルカ豊大学院生、同研究科 博士後期課程Rickdane Gomez大学院生、同大学理学部・熱帯生物圏研究センターの中村 崇准教授らによる研究成果が、国際的な学術雑誌「Marine Ecology Progress Series」誌に掲載されました。 <発表のポイント> ◆新規性:2025年は高水温状態が夏期以降も長期化し、海面水温が平年の最大月平均水温を上回った期間が123日間に達し、過去40年間で最長であったことを示しました。さらに、沖縄島中部~南東部で特に顕著な白化がみられ、強く影響を受けた地点では浅場(約3 m)より深場(約10 m)で高い白化度が確認されました。 ◆社会的な意義:本研究は、今後、海洋熱波が長期化することで、これまでとは異なる季節や水深帯、サンゴ分類群で白化が進む可能性を示しました。また、サンゴ白化リスクの評価には、高水温ストレスの「強さ」だけでなく「持続期間」も重要である点も改めて示されました。
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<発表概要>
琉球大学大学院理工学研究科 博士後期課程の木村 ルカ豊大学院生、同研究科 博士後期課程Rickdane Gomez大学院生、同大学理学部・熱帯生物圏研究センターの中村 崇准教授らは、2025年に沖縄島で通常のサンゴ白化期間である夏季を越えて発生した異例の白化について、過去約40年間の海面水温データ、2023年からの継続モニタリングおよび2026年冬季に実施した沖縄島沿岸7地点での現地調査より得られたデータを組み合わせて解析しました。
その結果、2025年には海面水温が平年の最大月平均水温(MMM)(注1)を上回った期間が123日間に達し、1985年以降で最長であることが判明しました。加えて、海面水温や高水温ストレス指標の一つであるDHW(Degree Heating Weeks)(注2)のピーク値は前年(2024年)よりも低かった一方、高水温状態が異例に長く、通常より遅い時期まで継続したことが特徴でした。
また、サンゴの白化状況には地域差や水深による違いがみられ、特に沖縄島中部から南東部沿岸で白化の影響が顕著でした。なかでも強い影響を受けた地点では、水深約3 mの浅場と比較して、水深約10 mの深場でより高い白化度が確認されました。さらに、白化への感受性はサンゴの分類群(属)によって異なることも示されました。
本研究は、今後、海洋熱波(注3)が長期化することで、これまでとは異なる季節や水深帯、サンゴ分類群で白化が進む可能性を示しました。野外でのサンゴ白化の発生時期やその影響を理解するうえで、高水温ストレスの「強さ」だけでなく、「持続期間」が重要であることを改めて示しました。
<発表内容>
サンゴ白化は、一般に海水温が最も高くなる夏季に発生します。沖縄島では、海面水温は通常7~8月に、高水温ストレス状態を示す指標の一つであるDHWは8~9月頃にピークを迎えるため、これまでの大規模な白化は主に7~9月に確認されてきました。しかし2025年は、これまで観測されてきた白化のパターンとは異なっており、高水温ストレス状態が夏期以降も低減されず長期化しました(図1参照)。そこで研究グループでは、1985年以降の海面水温・DHWデータと、2023年から定点で継続しているサンゴ群集モニタリングのデータ、さらに沖縄島7地点での現地調査より得られたデータを組み合わせ、2025年の白化の特徴を解析しました。
解析の結果、2025年には海面水温が平年の最大月平均水温(MMM)を上回った期間が123日間に達し、過去約40年間で最長となりました。海面水温は10月上旬に30.24℃、DHWは10月中旬に9.93℃-weeksでピークを迎え、高水温ストレス状態が12月中旬まで継続しました(図1参照)。2024年には記録的な高水温に伴い大規模なサンゴ白化が発生しましたが、2025年は前年と比較してピーク水温やDHWの値自体は低かった一方で、高水温状態が例年より遅い時期まで続いたことが2025年の大きな特徴でした。

図1 2023年から2026年にかけた沖縄島における平均海面水温およびDHWの時間変化を示す。
継続調査地点である沖縄島南東部の知名崎地先のサンゴ礁では、2025年8月時点での白化は極めて限定的でしたが、11月期には大きく増加し、特に深場での白化率は54.0±6.9%に達しました(図2参照)。さらに、沖縄島7地点での調査結果を比較したところ、白化の程度には明瞭な地域差がみられ、大浦湾、宜野座、知名崎沿岸域など中部から南東部の沿岸において高い白化状態が確認されました。
また、影響の大きかった地点では、一般に浅場よりも高水温になりにくいと考えられる、より深い水深帯において、白化の程度が進んでいたことが確認されました。これは、高水温状態が長期化したことで深い水深帯特有の高水温からの避難場所としての機能・効果が弱まった可能性に加え、前年(2024年)の夏期に発生した大規模白化による二次的影響が関係していた可能性を示しています。
さらに、サンゴ分類群(属)ごとの白化程度にも違いがみられました。深い水深帯では従来高水温に強いとされてきたサンゴ種群において高い白化状態が確認されました。これらの結果は、サンゴの高水温感受性が分類群だけで決まるのではなく、高水温ストレス状態の継続期間や過去の水温履歴など、複数要因の影響を受けている可能性を示しています。

図2 2023年から2026年にかけて、沖縄島知名崎の浅場(水深約3 m)および深場(水深約10 m)における造礁サンゴの白化程度の時間変化
本研究は、今後、気候変動影響によって高水温ストレス状態の長期化や季節的なずれが進めば、従来とは異なる時期や水深帯において大規模な白化が発生する可能性を示しています。そのため、サンゴ群集のモニタリングについても、夏季のみに限定しないことに加え、水深帯間での白化状態の比較を行うことが今後より重要になると考えられます。
<用語解説>
(注1) 最大月平均水温(Maximum Monthly Mean: MMM)
長期的な海面水温データから算出される、その地域で最も水温が高くなる月の平均水温です。サンゴの高水温ストレスを評価する際の基準として広く用いられています。本研究では、沖縄島周辺のMMMは28.8℃と算出されました。
(注2) DHW(Degree Heating Weeks)
サンゴが一定期間に受けた高水温ストレスの強さと持続期間を積算した指標です。一般にDHWが4℃-weeksを超えると広範囲な白化が起こる可能性が高まり、8℃-weeksを超えると深刻な白化や死亡のリスクが高まるとされています。
(注3) 海洋熱波
海水温が過去数十年と比べ顕著に高い状態が、数日以上続く現象。
<論文情報>
(1) 論文名:Prolonged thermal stress drives unprecedented coral bleaching beyond the typical summer period in Okinawa Island, Japan
(2) 掲載誌:Marine Ecology Progress Series
(3) 著者:Lucas Yutaka Kimura, Rickdane Gomez, Takashi Nakamura
(4) DOI番号:https://doi.org/10.3354/meps15273
