研究成果

「大琉球語辞典」を公開しました

     琉球大学の狩俣繁久名誉教授(戦略的研究プロジェクトセンター研究員)による大琉球語辞典を10月31日に公開しました。

    大琉球語辞典
    <大琉球語辞典について>

     大琉球語辞典は、琉球諸語の複数の辞典類をデジタル空間で統合した辞典です。沖縄学の父と称される伊波普猷が1921年(大正10年)に「琉球語大辞典の構想」を書いています。伊波普猷は、那覇方言を手本としてその構想を語っていますが、琉球諸語の複数地点の語彙を統合して検索できるようにできれば、琉球諸語の歴史を再構するための有力な手掛かりを得る好材料となることを考えていました。
     伊波普猷の琉球語大辞典は構想のままで終わりました。戦後、琉球大学の教授も務めた仲宗根政善は、伊波普猷の遺志を受け継いで琉球語大辞典を作るための準備を始めました。その土台となるものとして自らの故郷の今帰仁村与那嶺の方言語彙を収集した方言辞典の編集に取り掛かり、1983年に『沖縄今帰仁方言辞典』を刊行しましたが、琉球語大辞典の仕事を果たすことはできませんでした。
     2000年に琉球大学法文学部(当時)の狩俣繁久が附属図書館からの依頼を受け『沖縄語辞典』と『沖縄今帰仁方言辞典』を音声付デジタル方言辞典としてホームページ上で公開する「琉球語音声データベース」を公開し、ついで『奄美方言分類辞典』と「柴田武宮古方言ノート」を音声付デジタル辞典として公開しました。諸般の事情から四つのデータベースを統合することができず、四つの辞書を一括して検索できないという不便さがありました。
     その後、2017年度から大幅なリニューアルを行い、本サイト「大琉球語辞典」の公開に到りました。現在は、『沖縄語辞典』『沖縄今帰仁方言辞典』『奄美方言分類辞典』『新版沖縄伊江島方言辞典』『与論方言辞典』『伊良部方言辞典』を公開していますが、まだ未整備の部分もあり、整備を続けています。なお、『伊是名島方言辞典』『石垣方言辞典』『竹富方言辞典』『与那国方言辞典』の公開に向けた作業も進めています。

    <目的>

     大琉球語辞典は、自らの故郷のかけがえのない言葉を後世に残そうという著者たちの強い思いをもって収集し編集した辞典を、できるだけ多くの方々に利用してもらうことを目的に構築されたサイトです。琉球語の普及・継承と琉球語研究の進化を目的にインターネットで検索できる音声付電子辞典として一般の利用に提供しています。
    1.消滅の危機に瀕した琉球語の記録保存
    2.消滅の危機に瀕した琉球語の継承
    3.琉球語研究の進展、琉球語の諸側面の解明

    <特徴>

    ・横断検索ができる
    ・標準語(和琉検索)から検索できる
    ・琉球語(琉和検索)から検索できる
    ・類義語検索ができる
    ・『奄美分類辞典』にもとづいた意味分類を他の辞典にも整備。

    <プロジェクトについて>

     本サイトは科学研究費補助金 基盤研究(S)「言語系統樹を用いた琉球語の比較・歴史言語学的研究(課題番号:JP17H06115, 代表:狩俣繁久)」の成果の一部です。