お知らせ

令和6年度 入学式・大学院入学式 学長式辞

 令和6年度入学式の式辞を述べるにあたり、昨日朝に発生したお隣の台湾の東部沖を震源とする地震に関して、一言申し述べます。まずは、犠牲になった方々へ哀悼の意を表するとともに、被災された方々、そして本学と連携協定を結んでいる台湾の22大学にお見舞いを申し上げます。また沖縄に津波警報が発表されたため、少なくない航空便が那覇空港への着陸を断念したり、欠航になったりしました。この影響で、この式に出席できなくなった入学生や関係者がおられないか心配ですし、苦労してようやく参加できたという方もおられるかもしれません。こうした方々にお見舞いを申し上げます。

 さて、令和6年度学部入学生、および大学院入学生の皆さん、琉球大学への入学、まことにおめでとうございます。在学生ならびに教職員を代表して、皆さんに歓迎の意を表します。今年は嬉しいことに、5年ぶりに、保護者・ご家族・関係者の方々も参加いただいての入学式を開催することができました。新入生の皆さんをここまで育てサポートしてこられた皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。

 このたび入学が許可されたのは、学部1,601名、大学院252名、総数1,853名です。皆さんはこれから、琉球大学の学部あるいは大学院の学生としての生活を始めます。大学は学生を独立した大人として扱います。皆さんは、大学からの情報提供に基づいて、自ら考え、判断し、行動しなくてはなりません。担任の先生がいて丁寧に面倒を見てもらえたこれまでの学校生活とは大きく異なります。ぜひ頭を切り換えてください。

 大学への入学によって皆さんの呼び方が変わることも自覚してください。呼び方は学校教育法に記されています。皆さんは、小学校では児童、中学校および高等学校では生徒と呼ばれていました。大学入学とともに、これからは学生と呼ばれることになります。教えられる存在であったのが、主体的・自律的に学ぶ者としての「学生」となったわけです。もう生徒ではありません。

 とは言え、決して大学が学生に冷たいわけではありません。各学部の学科やプログラム等には学生指導主任教員および在学中を通じて皆さんをサポートする指導教員がいます。これは、小中高の持ち上がり担任のようなものです。 

 ぜひ、この指導教員とよく連絡を取り合ってほしいと思います。これ以外にも、共通教育棟やそのほかの場所に学生部の窓口があります。また各学部の事務室には学生対応の窓口があります。保健管理センター、ハラスメント相談支援センター、そしてこの春に開設されたヒューマンライツセンターにも相談窓口があります。これらでは、皆さんを丁寧にサポートする準備を整えています。困ったときはいつでも気軽に相談してください。

 今日は、さらに2つのことをお伝えしたいと思います。

 1つは、デジタル化についてです。皆さんには、おそらくオリエンテーションで案内されると思いますが、スマートフォンに電子的な学生証をインストールできるようになります。デジタル学生証は、今回、初めて導入されました。これから順次、機能を付加していって、様々な面で皆さんの大学生活が便利になるようにしていきたいと考えています。今後、全学生、そして教職員証へと広げていこうと計画しています。スマートフォンを用いたアプリによるデジタル学生証の導入は、全国でもまだそんなに多くなく、デジタル化の先頭グループにいることを誇ってくれてよいと思います。

 もっとも、これはパイオニア的な取り組みなので、使う中で要改善点が出てくることがあると思います。そうした場合は、ぜひ、アプリを通じて、あるいは直接、大学に伝えてください。また、新しい活用法のアイデアなどを思いついたら、それも伝えてほしいと思います。

 日本ではデジタル化が遅れていると言われています。これまでのやり方がそれなりにうまくいっていたので、油断もあったのでしょう。本学では、多くの見直しを行い、急速に進展するICTをうまく体系的に活用することによって、本学をよりスマートにする「琉大トランスフォーメーション(略してRX)」推進プロジェクトを進めています。その中で、学生の学びや大学生活がよりスマートになるようにする取り組みも考えています。その1つが、いま話題にしたデジタル学生証の導入という次第です。大学構成者の一員として、ぜひ本学のスマート化に貢献してくれれば嬉しいです。

 今日とくにお伝えしたいことの2つ目は、大学での学びについてです。大学での学びは、まさに学問がなされている場である大学ならではのものである、というのが大事な点です。本学も含めた大学の多くでは、学生はいずれかの学部に属して学びます。人類の知恵の多くは、研究や学びの方法などとともに様々な学問分野に集約されています。一人の人間が有限の人生でその全てを学びぬくということは不可能です。いずれかの専門分野を選んで、そこで知識と研究の仕方などを学ぶということになるわけです。ぜひ、新しい知を生み出す場で学ぶメリットを自覚して学んでほしいと思います。

 その上で、学問のフロントに近い部分での本格的な研究というのは大学院での課題となります。大学院の新入生は、まさにこの段階に入ったのです。ぜひ、頑張ってください。

 いま、大学での学びにおいては何らかの専門が必要だということを述べましたが、自分の専門だけを学べばよいということを述べたいのではありません。何らかの専門分野において生きた学問を学ぶと同時に、幅広い視野を持つことや、様々な体験を通して総合的な能力の向上を図ることにも挑戦していただきたいと願っています。「Life is all about balance」と言います。「人生はバランスが全て」「人生、要はバランス」というような意味ですが、これは大学での学びにも当てはまります。これを意識して学んでくれることを願います。

 学びの場、研究の場として見たとき、琉球大学はたいへん優れた大学です。

 皆さんはほんとうによい大学に入ったのだということをお伝えしたいと思います。本学は、生物多様性のきわめて豊かな亜熱帯の自然の真っただ中の、ユニークな歴史と文化を有する沖縄の地にあり、多様な知的興味を触発する素晴らしい環境に恵まれています。そして、ここで学び研究することを志す多様な人々が、全国そして世界から集っている総合大学です。このような多様性こそ、学びと創造の重要な基盤です。ぜひ、この素晴らしい場の一員として、本学の強みや特色を大いに生かして学んでください。

 大学での皆さんの学びの機会は、正規の授業によって提供されるだけではありません。友人同士で語り合ったり、自主的な読書会・勉強会を開いたり、関心の持てるサークルに加入したりするのもよいでしょう。琉球大学で用意している、例えば附属図書館の「ラーニング・コモンズ」や地域創生総合研究棟の「琉ラボ」など、学生だけでなく教職員や学外の方々との交流の場となるスペースを活用するのもよいことです。また、外国人学生のチューターとして留学生と交流するのもよいでしょう。大学の外にも活動の場、たとえば大学コンソーシアム沖縄が主宰する「子どもの居場所学生ボランティアセンター」などがあります。これらを通じて多様な人々と触れ合い、それを楽しみ、そしてその体験から学ぶということも素晴らしいと思います。

 以上、いくつか私が大事であると思うことをお伝えしてきましたが、最後に、いま私が強く願っていることを述べて締めくくりたいと思います。それは、令和6年度新入生の皆さんのこれからの大学生活が、楽しく実り多いものになることです。このことを強く願って、私の式辞といたします。

 

令和6年4月4日
琉球大学
学長 西田 睦