お知らせ

令和3年度 琉球大学入学式・大学院入学式 告辞

本日ここに、令和3年度 琉球大学入学式および大学院入学式を挙行できることは、私どもの大きな喜びとするところです。

このたび、学部1,567名、大学院300名、総数1,867名の入学を許可しました。新入生の諸君、琉球大学へのご入学、おめでとうございます。諸君のこれまでの努力を称えるとともに、琉球大学の在学生ならびに教職員を代表して、新入生諸君のご入学を、心から歓迎いたします。本式典には、ご来賓、保護者・ご家族、また同窓生の方々のご臨席はかないませんでしたが、インターネットで繋がっています。保護者・ご家族の皆様にも、心からお祝いを申し上げます。

諸君、とくに学部入学生の諸君は、今回の入学まで、不確定なことの多い不安な状況の中を見事に突破してきました。大学入学共通テストが、今回、紆余曲折を経て初めて行われました。また、新型コロナウイルス感染症対応ということが加わり、直前まで、様々な調整がなされました。諸君は、そうした変更等を見すえ、コロナウイルスに注意を払いつつ受験の準備を行い、入学者選抜を突破して本日に至ったのであり、不安の多い中を乗り超えてきた諸君の努力に敬意を表します。

本学も、こうした変動の中で、受験生に最大限の機会が提供できるように、また、安心・安全な状態で受験ができるよう、精一杯、工夫と努力を重ねてきました。諸君が、そして大学の私たちが、何年もかけて準備してきたことが、厳しいコロナ禍の中でも無事に実を結び、こうして諸君を本学に迎えることができたこと、誠に感慨深いものがあります。

この新型コロナウイルス感染症ですが、ようやくワクチン接種が国内外で始まり、希望が持てるようになりましたが、現在はまだたいへん厳しい状況にあります。一人ひとりが拡大防止のために最大限の注意を払う必要があります。

大学という組織としても、この状況にしっかりと対応しなくてはいけません。構成員の命と健康そして安心を守りつつ、学生諸君の学びの機会を最大限確保するため、大学として独自に「活動制限指針」を設けています。そしてこれを基に、各学部・大学院研究科等でより具体的で詳細なガイドラインを設けていますので、それらによく留意して行動してください。

今の沖縄地域の感染拡大状況に鑑みると、多くの授業がインターネットを活用した遠隔授業、あるいは遠隔方式と対面方式のミックスにならざるを得ません。この間の経験で、直接顔を合わせて、表情や動作豊かに肉声で語り合うことが、教育の場において如何に大切かを改めて認識したところであり、対面授業を十分に実施できないことは、たいへん心苦しいところです。しかし、大学は、あらゆる国において、注意深くないといけない場所のひとつなのです。なぜならば、大学は何千人あるいは何万人という若者がキャンパスに集まり、種々の科目を学ぶためにそれぞれの教室に離合集散する場だからです。この大学の肝とも言える、多くの若者が集う場所であるという条件は、感染症の拡大を防ぐにはたいへん難しいものとなります。したがって、どうしても丁寧な対策が必要になるのです。どうかこのことをよく理解していただければと思います。

さて、今日ここで諸君にとくにお伝えしたいことを、ひとつに絞ってお話しします。それは「主体的に考え、主体的に行動する」ということです。これは大学という場の根幹に関わることです。人類の知恵・知識を受け継ぎ、それに創造を加え、それを通じて人材を育成し、また知恵・知識を地域・社会に還元すること、これが大学の役目です。創造の場である大学には、「主体的に考え、主体的に行動する」ことが不可欠です。大学の一員になった諸君には、ぜひ「主体的に考え、主体的に行動する」ことを心得としてくれることを望みます。

この心得の今すぐの活用例は、授業の履修登録手続です。学部・学科等で決められた必修科目は必ず登録することになりますが、選択科目も多くあります。自分で考え、自分の責任で登録科目を選ぶことになります。指導教員に確認をしてもらうことになっていますが、まずは自分で考え、行動することが基本です。もちろん、気になることが出てきた場合などには、遠慮なく指導教員や学部の事務室あるいは学生部に相談してください。また心身の健康に関することの場合は、保健管理センターが丁寧に相談に乗ってくれますし、そのほかにも、諸君に窓口を開いている様々な全学機構や全学センターがあります。とくに今は新型コロナウイルス感染症対応のため、面談での相談がむずかしい場合があるかもしれませんが、メール、電話など、様々な連絡ツールの利用が可能です。ぜひ、自ら行動して必要な支援を積極的に活用してください。

「主体的に考え、主体的に行動する」ことについて、私自身の経験に基づいて、もう少しお話ししましょう。私が大学生であった今から半世紀ばかり前のことです。その頃はいわゆる大学紛争の時代で、私の通っていた大学では、全国の多くの大学と同様、授業が半年以上ありませんでした。そこで、自分たちで話し合って、いわゆる自主ゼミというものをたくさんやりました。中でも、書籍の輪読会は非常に有用でした。古典と言われる分厚い書籍など、読むべきだと思うのですが、一人では読み切るのがなかなか難しいものです。しかし、仲間となら可能でした。各章の分担を決めて、それぞれが担当部分をよく調べてきて回り持ちで解説役をするのです。その上で、皆で議論しても理解できないところが残ったら、専門の先生の研究室に聞きに行く、というようなことをしました。こうして多くの本で勉強することができました。今なら、輪読会はオンラインで可能です。画面で皆の顔を見ながら十分にディスカッションができます。結構楽しいものです。このような自主的な勉学をぜひ楽しみながら試みてほしいと思います。

もちろん、正規の授業にも力を入れて、主体的に取り組んでください。遠隔授業には、遠隔ならでのよい面がある一方、工夫の余地がまだいろいろあるでしょう。よりよい授業にするために、教員は試行錯誤を重ねています。授業は教員と学生でともに作り上げていくものです。諸君に授業の改善に繋がるよいアイデアが出てくれば、ぜひ遠慮なく担当教員に提案してください。琉球大学は、これからの「超スマート社会」と言われる社会をリードするのにふさわしい大学になろうと努めています。諸君が「主体的に考え、主体的に行動する」ことにより、この努力の流れを大学とともに強めてくれるならば、とても嬉しく思います。

琉球大学は、多様性に富む亜熱帯の自然と、個性豊かな沖縄の文化に囲まれた、特色ある優れた教育・研究の場です。そして1950年の創立以来、「地域に根差す、地域のための大学」としての役割を果たしてきました。8万6千名を超える卒業生・大学院修了生は県内・全国・世界で活躍しています。また県内・全国・世界には、本学と連携協定を結ぶ多くの組織があり、大きなネットワークが形成されています。この環境の中で、諸君が大いに成長してくれることを心から期待するとともに、コロナ禍でまだまだ制約のある中ですが、大学としても諸君の成長のため精一杯の支援を行う決意です。

むすびに、令和3年入学生諸君のこれからの大学生活あるいは大学院生活が、コロナ禍を乗り超えて、少しでも楽しく実り多いものになることを願って、私の告辞といたします。

 

令和3(2021)年4月6日
国立大学法人 琉球大学
第17代学長 西田 睦

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