お知らせ

令和3年度 卒業式・修了式 学長告辞

学部卒業生ならびに大学院修了生の皆さん、卒業・修了、おめでとうございます。琉球大学を代表して、皆さんの卒業あるいは修了を、心から祝福いたします。

新型コロナウイルスの勢いがまだまだ収まらない中、卒業生・修了生の皆さんとともに、こうして「令和3年度 琉球大学卒業式ならびに大学院修了式」を執り行うことができたことを、誠に嬉しく思います。感染拡大防止のために、卒業生・修了生のご家族や同窓の皆様、あるいはご来賓の皆様をこの場にお招きできないことはたいへん残念ですが、この式は今インターネットで中継されており、多くの皆様とはインターネットを介して繋がっていると感じています。ご家族・関係者の皆様には、これまで卒業生・修了生を物心ともに支えてくださったことに感謝するとともに、めでたくこの日を迎えられたことを心からお喜び申し上げます。

今回、卒業・修了を許可されたのは、学部学生1,516名、大学院学生219名、 総計1,735名です。大きな可能性を秘めた皆さんを、琉球大学から社会へ送り出せるのは、誠に嬉しいことです。本学が、その72年の歴史の中で社会に送り出した9万名近い卒業生・修了生は、沖縄、日本、そして世界の諸活動を支えています。各地で活躍するそうした先輩たちの中に、皆さんが新たに加わることをたいへん心強く思っています。そして、皆さんが本学で学んだことを生かして、これからの社会で大いに力を発揮してくれるに違いないと、期待をしております。

皆さんの学業期間の最後の2年間――大学院博士前期課程や修士課程修了生の皆さんにとっては学業期間のほぼ全てということになってしまったわけですが――新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けました。

本学では、大学構成員の方々の命と健康を守ることを第一に考えつつ、大学としての活動は止めずに、学生の皆さんの学びの機会を最大限維持することを基本方針として対応してきましたが、これはたいへん難しい挑戦でした。大学は、本来、多数のアクティブな若者――本学で言えば約8,000名の学生――が、キャンパスに集い、授業やサークル活動などで活発に交流しながら学ぶ場であり、様々な人が共同して研究する場であります。それゆえに、大学は、コロナウイルスが感染を拡げるのに都合のよい条件を備えた空間であります。大学全体としても、各学部としても、そして個々の教職員としても、変化する条件の中で、試行錯誤を重ねながら懸命に対応してきました。皆さんの努力と協力のおかげもあり、学内で大きな感染拡大を起こさずに今日を迎えることができたこと、とてもありがたく思っています。

もちろん、学びを継続するのに最もたいへんな挑戦をしてきたのは、学生の皆さんです。とくに、対面での授業が当たり前だったそれまでの日常が一変し、オンラインによる遠隔授業に切り替わることとなり、それに適応することはたいへんだったと思います。もし、対面授業であれば得られたであろう学習経験を、皆さんの創意工夫で補うなど、様々な試行錯誤されたことと思います。そうした挑戦を経て、本日、見事に卒業・修了された皆さんの努力に敬意を表します。

さて、皆さんはいよいよ社会に巣立ちます。皆さんが飛び立つ社会について少し考えてみましょう。

今の時代について、「VUCA(ブーカ)時代(予測が困難な時代)」と言われます。ますます速度を上げるテクノロジーの発展、それによる地球レベルでの即時の大量の情報伝達、全世界的な経済的相互関係の深まり等々により、あらゆるものを取り巻く環境と相互関係が複雑さを増し、将来の予測が困難な時代になっているのです。2年前から世界中が苦しんでいる新型コロナウイルス感染症のパンデミック・・・。新たな感染症の危険性は以前から指摘されていましたが、ここまでのことが起きるとはほとんどの人は考えていませんでした。また、今年に入り、世界中の人々が心を痛めているウクライナでの軍事行為についても、危険性は一部で指摘されていたものの、武力行使によりここまで多くの一般市民が巻き込まれる事態に陥ると想像していた人は少なかったのではないでしょうか。しかし、これらは実際に起こっているのです。

そんな中で、生物多様性の低下や地球温暖化を含む地球環境問題など、近い将来を考えると早急に取り組まなければならない課題も山積しています。そして、デジタル技術とそれによるイノベーションはますます社会に広く深く入り込んでおり、既存のビジネスモデルだけでは通用しない世の中になってきています。

こう見てくると、今はピンチの時代のように感じられるかもしれません。しかし、見方を変えると、今はチャンスだ、と捉えることもできると思います。皆さんのような若い人たちには、自分が学んだこと、自分の得意なことを生かして、ピンチに陥っているように見える社会・世界をよりよい方向に変えていく、その役割を果たせるチャンスだと考えていただきたいのです。

皆さんは本学での学びの中で、課題を適切に設定し、その解決に向けて取り組む力を身に付けているはずです。研究では、課題を適切に設定するために必要な情報を集め、分析し、そこから仮説を立てる。そして、それを検証するための調査や実験を考案し、種々の技法を駆使しながら調査や実験を実施してデータを集め、それを分析して得た結果に基づいて考察し、暫定的な結論を得る。それを新たな仮説にして、さらにこのサイクルを回していく、あるいはアクションに移していくということを経験してきたと思います。そして、この過程で、他者の協力やアドバイスを得ることがたいへん有効であることは、実際に皆さんが体感したことでしょう。皆さんが本学で磨いた「考える力」「協働する力」を、これからの社会で積極的に生かしてくれることを願います。

琉球大学は、地域に貢献する大学、世界との懸け橋になる大学として、その活動をさらに活発に行っていきます。皆さん、今後は同窓生として本学を力強く支援していただければと思います。また学び直しをしたくなれば、母校を積極的に活用してください。いつでも歓迎いたします。

令和3年度卒業生・大学院修了生の皆さんが、今後、大いに健闘されること、そして一人ひとりの人生の幸多からんことを心から願って、私からのお祝いの言葉といたします。

令和4年3月18日
国立大学法人 琉球大学
第17代学長 西田 睦