研究成果

沖縄トラフでの「ちきゅう」掘削によって、新たな海底下鉱床形成モデルを提案

 オープンアクセスの学際的電子ジャーナル「Scientific Reports」誌に、沖縄トラフにおける海底塊状硫化物(SMS)堆積物の形成メカニズムに関する論文が掲載されました。地球深部探査船「ちきゅう」を用いた掘削サンプルに基づく研究成果です。この航海には本学理学部の教員(土岐知弘准教授)と学生(上原力、宇座大貴)も参加し、データの取得に貢献しました。The D/V Chikyu Expedition 909 Scientists(地球深部探査船「ちきゅう」第909次航海乗船研究者)としてリストアップされています。この掘削航海は、2016年11月16日〜12月15日にかけて「CK16-05」航海として、中部沖縄トラフで実施されました。

<発表概要>
  •  沖縄トラフの熱水活動域でみられる海底塊状硫化物(SMS)堆積物は、陸上の火山性塊状硫化物(VMS)鉱床に対比され、重金属や貴金属などの金属資源として有望視されています。

  •  SMS鉱床の形成には、これまで2つのメカニズムが提案されていました。すなわち、1)海底面上への熱水の噴出・沈殿・堆積によるものと、2)海底面下の堆積物中の空隙や多孔質な堆積物層を置換して形成されるものです。

  •  後者のメカニズムは、地球史をとおしてグローバルな物質循環に重要な役割を果たしている可能性があるにもかかわらず、現在進行形の状態を直接的に調べることが困難なため、詳細は不明でした。

  • 今回、沖縄トラフの活動的なSMS鉱床付近を科学掘削し、海底下深部の試料の岩石学的、地球化学的、地球物理学的データから、SMS鉱床が海底下の軽石層の変質と置換によって形成されたことが明らかになりました。海底面下での深部起源のSMS形成メカニズムの解明に貢献しました。

  • 軽石層と半遠洋性堆積物層が交互に重なっている場所が、硫化物鉱化作用の形成場として機能しています。そのような場所では、熱水流体は堆積物層の間を横方向に数百メートルも移動し硫化物の沈殿を生じたことが判明しました。

<論文情報>

論文タイトル:Subseafloor sulphide deposit formed by pumice replacement mineralisation
雑誌名:Scientific Reports
著者名:Tatsuo Nozaki, Toshiro Nagase, Yutaro Takaya, Toru Yamasaki, Tsubasa Otake, Kotaro Yonezu, Kei Ikehata, Shuhei Totsuka, Kazuya Kitada, Yoshinori Sanada, Yasuhiro Yamada, Jun‑ichiro Ishibashi, Hidenori Kumagai, Lena Maeda, the D/V Chikyu Expedition 909 Scientists
DOI番号:10.1038/s41598-021-87050-z
論文アクセスURL:https://rdcu.be/cjeCK