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<発表者> ![]() 図1. 実験対象としたメダカ <ポイント> |
<研究の背景>
本研究グループは、これまでメダカに注目して繁殖に関する研究を行ってきました。メダカは体長約2~3 cmの小さな魚で、繁殖期のオスは産卵行動が非常に活発です。過去の研究により、メスが多くいる環境では、オスは1日に平均19回、最大27回も産卵行動が可能であることが分かっています。また、約10回続けて産卵行動をすると1回あたりの精子数が減り、受精率が急激に低下することが明らかになっていました(<過去のプレスリリース>を参照)。しかし、オスの連続した産卵行動に伴う精子の泳ぐ速さの変化については、これまで分かっていませんでした。メダカは卵と精子(図2)を水中に放出して体外受精します。水中では卵も精子もすぐに散らばってしまうため、精子がどれだけ速く泳いで卵にたどり着けるかが、受精の成否を大きく左右します。そのため、精子の泳ぐ速さは、自身の子どもを残せるかどうかに直結する重要な性質だと考えられます。

図2. 顕微鏡で観察したメダカの精子
<研究の内容>
本研究では、ヒメダカ(以降、メダカ)を用いて、オスが何度も連続して産卵行動をすると、精子の泳ぐ速さは低下するのかを調べました。実験では、まず、オス1匹とメス1匹を同じ水槽に入れ、1回だけ産卵行動をしたオスと、オス1匹に対してメス15匹を同じ水槽に入れ、4時間で平均9.3回産卵行動をしたオスを用意しました。そして、それぞれのオスの精巣から精子を取り出し、水中での精子の泳ぎを顕微鏡で撮影し、速度を測定しました。
その結果、精子の泳ぎ始めの10秒間で比べると、1回だけ産卵行動をしたオスの精子の泳ぐ速さは平均106 µm/sだったのに対し、何度も連続して産卵行動をしたオスの精子は平均83 µm/sと、約2割低下していました。この差は主に精子の泳ぎ始めの時間帯に見られ、21~30秒後においても約2割の差がありましたが、40秒を過ぎると両者の差は見られなくなりました(図3)。受精の成否は、精子が泳ぎ始めてすぐの短時間で決まると考えられているため、本結果は、何度も連続して産卵行動をしたオスでは、繁殖に重要な時間帯に精子の泳ぎが遅くなることが分かりました。

図3. 1回繁殖オス(水色)と連続繁殖オス(ピンク)における精子の速度の時間変化。点は平均、エラーバーは標準偏差、プロット上の数は計測した精子の数を示す。
***は統計的に非常にはっきりとした差があること、*は差があること、nsは差がないことを示す。
<期待される効果・今後の展開>
本研究により、メダカのオスは産卵行動を重ねると、放出する精子数が減るだけでなく、精子の泳ぐ速さまで低下することが初めて明らかになりました。これまでは主に精子の数に注目した研究が進められてきましたが、精子の質の変化もあわせて考える必要があることを示しています。今後、動物の繁殖戦略をより正しく理解するうえで、本研究成果は重要な手がかりになると期待されます。また、精子数の減少と速度低下が、それぞれどの程度受精率に影響しているのかを明らかにすること、そして連続した産卵行動によってなぜ精子の泳ぐ速度が落ちるのかなどの生理的なしくみを解明することが課題です。
<資金情報>
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(課題番号:JP25K18549)、公益財団法人 クリタ水・環境科学振興財団(24H083)の支援を受けて実施しました。
<掲載誌情報>
【発表雑誌】 Journal of Ethology
【論文名】 Qualitative sperm depletion: Successive mating reduces initial sperm velocity in medaka fish
【著者】 Yuki Kondo, Takeshi Ito, Satoshi Awata
【掲載URL】 https://doi.org/10.1007/s10164-026-00887-7
<過去のプレスリリース>
メダカのオスはメスとの産卵行動を1日平均19回できるが放精数と受精率は回を重ねるほど激減
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-15120.html
