お知らせ

平成31年度 琉球大学入学式・大学院入学式 告辞

草花が日々彩りを増しつつあるこの美しい季節に、ご来賓、保護者・ご家族ならびに同窓生の皆様のご臨席のもと、平成 31 年度 琉球大学入学式および大学院入学式を盛大に挙行できますことは、私どもの大きな喜びとするところです。

ただ今、学部長および研究科長の申請に基づき、学部 1,575 名、大学院 314 名、総数 1,889名の入学を許可いたしました。新入生の皆さん、琉球大学へのご入学、おめでとうございます。皆さんのこれまでの努力を称えるとともに、琉球大学の在学生ならびに教職員を代表して、新入生の皆さんのご入学を、心から歓迎いたします。また、新入生の保護者・ご家族の皆様にも、心からお祝いを申し上げます。

これから新しく学生生活を始める皆さんに、学びと交流の舞台となる琉球大学の魅力について紹介いたしましょう。

琉球列島に立地している本学は、他地域の大学にはない特色にあふれています。多様性に富む亜熱帯の自然、そして個性豊かな沖縄の文化に囲まれた優れた学びと交流の場を、琉球大学は学生の皆さんに提供しています。

また、地理的にアジア・太平洋地域の要ともいえる位置にある琉球列島は、古くから多くの国々と盛んに交流してきた歴史を有しています。琉球大学の教育・研究には、異なる言語や文化を持つ人々との交流を通して、沖縄という地域が体得してきた知恵も活かされています。

大学設立の経緯も、本学の今を特徴づけています。琉球大学は、この地域の人々の熱望により、戦後間もない 1950 年に首里城跡地に開学しました。そして、ミシガン州立大学の教授陣の十数年にわたる協力を得て成長を遂げました。この中で、「地域に根差す、地域のための大学」である「ランドグラント大学」という米国の大学システムの精神を受け継ぎました。このような成り立ちを知ると、国際性と地域性を併せもつという本学の特色がよく理解できると思います。

こうした特色は、琉球大学の教育・研究における強みとなっています。本学は、7つの学部、9つの大学院研究科、そして附属病院などを擁する総合大学として、基礎的な研究から社会に直接貢献する研究まで、幅広い研究に取り組んでいます。とりわけ、地域特性を活かした生物多様性研究、海洋科学・島嶼地域科学研究、健康長寿科学研究、琉球・沖縄文化研究などの分野における成果は、世界的にも注目されています。これらに代表されるオリジナルな研究に基づく教育こそ、学生の皆さんが深い学識と豊かな人間性を培い、地域や国際社会で活躍する人材として育つために不可欠であると私たちは考えています。

ところで、いま世界も日本社会も大きく且つ急速に変化しつつあり、世の中の先行きがよく見えない、という声があちこちで聞かれます。そして大学への期待が高まっています。

では、大学とはどのような場所なのでしょうか。そこでは何を学ぶのでしょうか。少し考えてみましょう。

人類はこれまで、さまざまな知識と知恵を蓄積し、それらの知を体系化し、活用することによって、病や、飢餓や、極端な不平等などを、次第に乗り越えつつあります。大学はこの「知の体系」を保持し、更新し、継承を図りつつ、学生、つまり未来の社会の担い手、を教育するところです。いま述べた知の体系なしには、現在の、そしてこれからの人類社会は存立しえないことは明白です。大学は社会にとってますます無くてはならない重要なものになっているのです。大学への期待が高まっているのも、当然だと言えるでしょう。

そうした大学での、皆さんの学びの根幹を、私は次のような「技能」を習得することにあると考えています。その技能とは、①この世界にあるさまざまな問題のいずれかを解明あるいは解決すべき課題と設定し、②解決に資する仮説を事実に基づいて考案し、③それを他の仮説や論説と突き合わせて議論・考察し――ちなみに、この部分を自然科学系の研究論文では「ディスカッション」と言いますが――、このディスカッションを経て合理的に結論に接近する、こういうプロセスを進める技能です。

この技能は、研究のための基本でもありますが、同時に、他者と議論し、共に合理的に結論へ接近するための技能ですから、大きく変化する社会における職業の場においても、極めて有用なものです。さらには、ここまで言えばすぐにお分かりいただけるように、健全な民主主義社会の担い手に強く求められる技能でもあるのです。

大事なことは、これは「技能」ですから、教え、学ぶことができ、また、教えられ、学ばないと身に付かないということです。卑近な例で述べれば、自転車運転です。自転車は、意識的に練習しないと直ぐには乗れないものです。また別の例ですと、読み書きです。皆さんは普段、読み書きを普通のこととして行なっておられると思います。しかしこの能力は一朝一夕に身に付いたものではなかったはずです。かなりの年月にわたって教育と学習で脳を訓練した結果、身に付けた技能が基礎になっているのです。

新入生の皆さん、「課題を設定し、関連情報を収集し、仮説を考案し、議論をし、合理的に結論を導く」技能を、意識的に琉球大学で学んでください。繰り返しになりますが、この技能は、教えられ、学ばないと身に付かないものであり、教えられ、学べば身に付くものです。私自身を振り返ると、粘り強い反復訓練が必要です。高度な技能の習得には反復訓練は避けられません。ぜひ、労を惜しまずに、力を付けてください。

琉球大学はそれに応えて、新入生の皆さんが、本学での学びを通して、これからの社会で大いに活躍するための力を身に付けられるよう、精一杯サポートいたします。

結びに、新入生の皆さんのこれからの大学生活が、楽しく実り多いものになることを願って、私の告辞といたします。本日は、まことにおめでとうございます。

平成 31(2019)年4月5日
国立大学法人琉球大学
第 17 代学長 西田 睦

 

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