研究成果

画期的なエクソソーム精製技術の開発 ~エクソソーム応用研究によるメディカルヘルスケア領域発展~

発表概要

 琉球大学医学研究科 形成外科の清水 雄介 教授、医学部附属先端医学研究センターの角南 寛 特命准教授らのグループは脂肪由来幹細胞の培養過程で培養液に放出されるエクソソームに着目し、2020年より沖縄県の研究助成を受けてヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(本社:山形県鶴岡市、代表取締役社長:橋爪 克仁、以下、HMT)と共同研究を進め、このたび画期的なエクソソーム精製技術の開発に成功しました。

 エクソソームは細胞から分泌される直径 30~150 nm の粒子(細胞外小胞体)で、ヒトをはじめとする哺乳動物では血液、尿、母乳、唾液などの体液中に存在しています。エクソソーム内には、マイクロ RNA、タンパク質、代謝物等が含まれ、細胞や組織の損傷を脳や各機能に伝達し、損傷を被った細胞を修復する役割を持っていると考えられています。そのため疾病の診断や再生医療、治療などの幅広い領域において、エクソソームに関する多くの研究が世界中で実施されています。

 また、昨今の研究では、植物や菌類などの天然資源にもエクソソームが存在することが明らかとなっており、化粧品開発や食品開発において機能性エクソソームの応用に関する研究が盛んに行われるなど、ヘルスケア分野においても注目度が高まっています

 このエクソソームを精製・抽出する方法として、現在は超遠心法が主流となっています。同法では高価で大型の超遠心機が必要であり、4時間以上かかる操作が必要な上に、エクソソームの回収量が不安定であり、多検体の精製が行えないなどの課題が存在していました。

 共同研究チームが開発した技術では、超遠心法とは別の技術としてエクソソームの膜が帯びる負電荷とのイオン交換能を利用し、小型のカラムを用いて20分以内にエクソソームを溶出し精製することが可能となりました。この研究成果については琉球大学とHMTが共同で特許を出願し権利化しました。

 本研究の成果であるエクソソーム精製技術については、HMTの開発によるエクソソーム精製カラム「EVs Quick FilterTM」「EVs Quick FilterTM Midi」として、2022年 12月19日より販売が開始されます。同製品によりエクソソームが簡便に採取・精製できるようになれば、今後の市場規模の広がりが期待されるエクソソームに関する研究開発を支援することができます。

 琉球大学とHMTは沖縄由来の天然資源に含まれるエクソソームにも着目しており、今後も共同して機能性エクソソームを探索し、その有用性の情報をヘルスケア関連企業などに提供すること等により、ヘルスケア・ソリューションサービスの構築にも取り組んでまいります。

 

【特許について】
現時点では未公開ですが、以下の特許が出願・権利化されています。
特願2022-057872(特許第7160294号) 「脂質二重膜に覆われた微粒子又は細胞外小胞の回収方法および脂質二重膜」  出願人:国立大学法人琉球大学、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 

出願日:2022.3.31
登録日:2022.10.17

 

【沖縄県による研究助成について】
本共同研究は沖縄県による以下の助成を受けて実施しました。
1. 沖縄県 企画部 科学技術振興課「成長分野リーディングプロジェクト創出事業」  2020~2021年度
2. 沖縄県 商工労働部 ものづくり振興課「バイオ関連産業事業化促進事業」  2022~2024年度(予定)