お知らせ

2021年 学長年頭挨拶

【年頭挨拶概要】
はじめに

 皆さま、2021年あけましておめでとうございます。まずは皆さまとともに新年を迎えることができたことに感謝し、年頭にあたってのご挨拶を申し上げます。
 昨年は、コロナ禍のなかで、学生・教職員・役員の皆さまの努力により、本学は高等教育機関としての大学の役割をなんとか果たし続けることができました。その努力に深く感謝を申し上げます。私も学長として、大学構成員の命と健康を守るために感染拡大防止策を適切に図ると同時に、大学本来の使命である教育・研究・地域貢献・診療等の活動を、最大限遂行することに心を配ってきました。
 本日は、こうした新型コロナウイルス感染症対応について振り返えった後、本学が推進してきた活動のうち代表的な取り組みをご紹介し、最後に、急速に変化する大学をめぐる状況とそれに対する心構えについて、考えていることをお話しします。

1.新型コロナウイルス感染症対応

 本学は、昨年2月に危機対策本部(新型コロナウイルス感染症対策)を設置し、様々な感染症対策を実施してきました。日々変化する状況に対応すべく、危機対策本部会議を26回開催するとともに、教育研究評議会や役員等懇談会等の様々な場で議論を重ねました。また、危機対策本部にて熟慮を重ねて「琉球大学新型コロナウイルス感染症拡大防止の活動制限指針」を策定しました。これが本学の活動レベルを定めるよい指針になっていればと願っています。
 教職員や地域の皆さまをはじめ多くの方々に支えられ、様々な学生支援、教育支援の取り組みが実施できたことは、たいへんありがたいことでした。
 大学病院の皆さまには、医療の最前線として奮闘いただいていることに心から感謝するとともに、深く敬意を表したいと思います。
 これから、いよいよ入試本番を迎えます。感染防止を徹底しながら入試を円滑に実施することは容易なことではありませんが、皆さまとともに困難を乗り越えていきたいと考えています。

2.ガバナンス改革と経営

 近年、ガバナンス改革を推進し大学経営の強化を図ることが、社会から強く求められており、大学評価の視点からも注目されています。昨年4月から導入した教員の年俸制や新たな教員業績評価制度の導入などの人事給与マネジメント改革は、こうした求めに応じたものでもありました。
 本年度は第3期中期目標期間の5年目であり、4年目終了時の評価が文部科学省において行われています。本学の特色や優れた取り組みが記載された報告書を作成し提出しましたが、この報告書にまとめられた成果は、全教職員の4年間の尽力の賜です。
 今年は、第4期中期目標・中期計画を実質的に作成する年になります。第4期中期目標・中期計画の様式や評価の在り方などについては、文部科学省において、これまでとはかなり変える方向で検討が進められています。本学では、この動向に注視しつつ、対応の準備を始めています。

3.教育・研究・社会貢献等の活動の強化

 教育・研究・社会貢献等の活動の強化に向けて、本学は昨年も様々な取り組みを実施いたしました。その結果、いろいろな前進がありました。
 つい先日、国立大学法人評価委員会から、2019年度に係る業務の実績に関する評価の結果が届きましたが、法人の基本的な目標に沿って計画的に取り組み、順調であり一定の注目事項もある、との良い評価を得ました。特に注目される事項として、「組織の枠を超えた『首里城再興学術ネットワーク』の設立」があげられ、写真付きで紹介されました。また、「事務系職員の資質向上及び能力開発を目的とした研修ポートフォリオの導入」や「SDGs達成に資する活動」、「大学院教育の質保証体制の機能強化」、さらに病院関係として「臨床研究に係る人材育成と支援体制の強化」や「新型コロナウイルス感染症への対応」などが注目事項とされました。今年も、これらを含む意欲的な取り組みをさらに強化していければと思います。
 昨年には、大きなプログラムへの採択も新たにいくつかありました。代表的な例のひとつをご紹介します。JST「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」育成型への採択です。非常に厳しい選考を見事に突破しての採択です。本学の学際的チームと沖縄高専、中城村、オリオンビール(株)などが参画する産学官連携研究プロジェクトで、提案の中身が優れていることに加え、本学がこれまで自治体や民間企業と積み重ねてきた取り組みの実績を踏まえての提案であることが採択につながる肝であったと思います。その意味でも、本採択をたいへん嬉しく思っています。

4.活動強化と発展を支える体制整備

 本学の活動強化と発展を支える体制整備の代表例として、西普天間住宅地区跡地への医学部及び大学病院の移転事業があげられます。2024年度末の移転完了に向けて、当該事業は順調に進んでおり、今年、いよいよ大学病院の着工です。
 本学は、昨年5月22日に開学70周年を迎えることができました。予定していた記念事業のいくつかは、新型コロナウイルス感染症拡大防止に配慮して延期していますが、『琉球大学創立70周年史』は8月に無事発刊されました。電子版には本学の公式WEBサイトからアクセスできます。多くの本学関係者による力作です。まだご覧になっていない方は、ぜひご一読ください。

5.急速に変化する大学をめぐる状況

 ここ数年で、大学をめぐる状況が急速に変化しています。2018年11月には中央教育審議会による「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」、2019年6月には文部科学省による「国立大学改革方針」、昨年3月には文部科学省・内閣府・国立大学協会の3者による「国立大学ガバナンス・コード」など、様々な答申や政府からの要請等が、矢継ぎ早に発出されています。また、昨年7月に閣議決定された「統合イノベーション戦略2020」や、経済財政諮問会議などでの議論の中でも、大学が盛んに話題にあがっています。加えて、文部科学省に置かれた「国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議」が、「社会変革を駆動する真の経営体へと国立大学を転換」させるべく、昨年の後半に活発な議論を進めているようです。
 日本の経済・社会の先行きが見えにくくなっている中で、大学に対する期待が大きくなっており、また様々な要望・要請が出されつつあるということだと思います。こうした状況をしっかり受け止め、的確に応えていく必要があります。

おわりに

 こうした状況に鑑み、松尾芭蕉が晩年に提唱したとされる「不易流行」という言葉をご紹介いたします。「不易」は時代を超えて不変なるもの、「流行」は時代とともに変化していくものを意味します。俳諧の神髄は、一見相反するように見える両者を満たすところにこそある、ということなのだと思います。この言葉は、まさに学問・科学の場である大学にも当てはまるのではないでしょうか。
 大学は、社会の中で社会のために、刻々と進んでいく知のフロントを担っています。それゆえ古びないはずだし、古びてはならないのです。もちろん、古びないということは「流行」を表面的に追うことではありません。急速に変わる時代・社会・政府からの要請に右往左往するのではなく、高等教育研究機関としての機能の基本を踏まえ、的確に応えていくこと。このことが今、大学に強く求められています。
 最後に、本年が皆さまにとって、そして琉球大学にとって良い年になることを祈念して、私の年頭の挨拶を締めくくりたいと思います。ありがとうございました。

2021年(令和3年)1月4日
第17代学長 西田 睦

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