研究成果

昨日8/5に沖縄で観測された環境基準を超える 西之島の火山起源の高濃度PM2.5イベントに関する情報提供

~2020年、琉球大学は開学70周年を迎えます。~
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<琉球大学・長崎大学共同発表>
 8/2から8/4にかけて九州地方で観測された高濃度PM2.5の要因となった可能性のある小笠原諸島の西之島の火山起源の空気塊が、8/5に沖縄地方に到達したとみられ、沖縄市の沖縄大気観測局では大気環境基準(1日平均値で1立方メートルあたり35μg以下)を超過するPM2.5濃度が観測されました(図1、参考https://weathernews.jp/s/topics/202008/050205/(ウェザーニュース)。しかしながら、火山灰の飛来と二酸化硫黄などの火山ガスの大気酸化過程により二次的に生成した硫酸や硫酸塩粒子のどちらが寄与しているのかは未解明でした。

 琉球大学の山田広幸准教授および新垣雄光教授、長崎大学の中山智喜准教授、名古屋大学の坪木和久教授および松見豊名誉教授は共同で、琉球大学理学部において、光学式粒子計数器による大気中のエアロゾル粒子の粒径分布の測定、エアロゾル粒子のフィルター捕集と化学分析、気象レーダーなどによる気象パラメータの測定に関する共同観測研究を実施しています。今回、本観測で得られたエアロゾル粒子の粒子径分布を解析しましたので情報提供いたします。

 図2に、8/3、8/4、8/5の12:00-13:00に測定されたエアロゾル粒径分布を示しました。その結果、PM2.5の重量濃度がピークに達した8/5に1ミクロン以下の微小粒子と1ミクロン以上の粗大粒子の両方の粒子が大きく増加しました。火山灰は、主に1ミクロン以上の粒子直径を有し、二次生成粒子は、主に1ミクロン以下の粒子直径を有すると考えられることから、沖縄で観測された西之島の火山の影響によるPM2.5濃度の増加には、火山灰と二次生成粒子の両方が寄与していることが判明しました。本研究グループでは、フィルターに採取したエアロゾル粒子の化学分析を実施するなど、今後より詳細な解析を進める予定です。

 高濃度のPM2.5を吸引することにより、呼吸器疾患や循環器疾患を引き起こす可能性があります。西之島の火山活動は、活発な状態が続いており、今後も気象条件によっては、日本列島に比較的高濃度のPM2.5が到達する可能性があります。特にぜんそく等の既往症を有する方は、ご注意いただければと思います。

<謝辞>
 本研究は、科学研究費補助金 基盤研究S(16H06311)(代表:坪木和久)および名古屋大学宇宙地球環境研究所 一般共同研究(代表:中山智喜)の一環として実施したものです。


図1 沖縄市におけるPM2.5および二酸化硫黄ガスの濃度


図2 8/3, 8/4, 8/5の12:00-13:00に琉球大学で観測されたエアロゾル粒子の粒径分布