皆さま、あけましておめでとうございます。
令和8年の幕開けにあたり、まずは昨年一年間、本学の教育、研究、地域連携、地域貢献、国際交流など、大学運営のあらゆる場面でご尽力くださった教職員の皆さま、そして、学内の環境整備や財務管理の面からこうした活動を支えてくださった職員の皆さまに、心から感謝申し上げます。とりわけ、西普天間に移転したばかりの大学病院や医学部の教職員の皆さまにおかれましては、運営を軌道に乗せるべく様々なご苦労があったものと拝察いたします。ありがとうございました。琉球大学は、構成員の皆さまの創意工夫とご尽力のおかげで、昨年1年間、学生の学びを支え、研究の発展に寄与し、地域社会との連携を深めることができました。そのことこそ、本学にとって何よりも誇るべき成果だと私は考えています。
昨年をふり返り、改めて思い起こされるのは、日本やグローバル社会全体にもたらされた、さまざまな「危機」についてです。予想を超えて加速する少子化や、不安定な国際情勢、それに伴う物価やエネルギーコストの高騰などによって、日本の大学教育や研究を取り巻く環境は、以前にも増して厳しくなっています。そして、日本の高等教育が直面するこうした「危機」は、琉球大学のような国立大学法人にも深刻な影響を及ぼしました。
しかし昨年、そのような状況下で数々の課題に直面しながらも、皆さまが、周囲の方々とのチームワークを大切にしながら、研究の発展のため、学生の成長のため、あるいは地域振興のために、それぞれの持ち場での役割を、日々献身的に果たしてくださったおかげで、本学は、沖縄における高等教育機関としての責務を見失うことなく、邁進することができました。
教育の現場では、教員ポスト削減の進む厳しい状況の中、教育の質保証に向け、これまで以上に学生の主体性を育む授業や新しいカリキュラムの導入に取り組んでいただいたことと思います。研究については、それぞれの分野の基礎研究を一層発展させつつ、産学官と、昨今は「金融」の「金」も含めた「産学官金」の連携を通して、社会課題の解決に資する応用研究も積極的に進めてくださいました。地域貢献という面でも、琉球大学の存在意義を示す活動が数多く展開され、また、国際交流についても、教育・研究の連携先となる交流協定機関の増加に伴い、国際共同研究や国際共修の機会を増やすことができました。こうした一つひとつの成果が、本学の価値を一層高めてくれたと確信しています。
なお、昨年、本学で展開された様々な取組の実績については、ただ今、広報担当の役員と教職員を中心に準備を進めている、新しい統合報告書に掲載される予定です。琉球大学の現在地と未来への展望を、ビジュアル的にもわかりやすく描いていて、従来の統合報告書とは一味違う、と感じていただけると思います。来月早々にはお披露目できるそうですので、ぜひご期待ください。
さて、話を元に戻します。
新年の令和8年、2026年も、私たち琉球大学を取り巻く環境は予断を許さない状況です。大学経営においては、引き続き財政基盤の強化と効率化が求められ、教育・研究においても、質保証や国際競争力の向上に向けて、一層の努力が不可欠です。加えて、デジタル技術やAIの進化、グローバル化など、今、社会で加速しているさまざまな変化に、迅速かつ柔軟に対応する力が、大学においても求められています。
こうした状況をふまえ、今年、琉球大学が重点的に取り組むべき課題は、少なくとも三つあると私は考えています。
まず第一に、教育改革です。本学の学生が、自ら考え、行動し、不確定な未来を切り拓くことができる人間へと成長できるよう、就学環境をさらに整える必要があります。具体的には、学修成果の可視化やアクティブラーニングの推進、データを活用した教育、いわゆる「教学マネジメント」を通して、学生を学びの主体とする教育を実現することです。教員定員の削減や教育経費の縮減という厳しい状況において、教育の質を落とさずに、時代や学問分野の要請にマッチした人材育成を実現することは容易ではありません。しかし、どんな状況にあっても、学生の教育の機会を担保するために、琉球大学にどんな選択肢があるかを考えることは重要です。共通教育改革については、昨年までにもかなり進んできたところですが、今年は、大学全体の教育改革に本格的に着手する年になると思います。カリキュラムの見直しや教員組織の再編に加え、他大学と連携したカリキュラム運営などについて、具体的な検討が始まる年になると考えています。
第二の課題は、研究力の向上と社会実装の加速です。基礎研究の充実はもちろんですが、琉球大学が地域貢献大学であるという原点に立ち戻り、地域課題や国際的課題の解決に資する応用研究を引き続き推進し、研究成果を社会に還元する仕組みを強化できれば、と考えています。昨今、研究者に求められる役割は、研究と教育の両立はもとより、大学運営や社会貢献に係る学内外の委員など、さらに多様化しています。その一方、国からの運営費交付金は、法人化以降の20年で約13%削減されています。つまり、教員の皆さまにおかれては、時間も予算も十分でない環境で教育や研究を進めなくてはならないという、大変な困難を強いられているということです。大学の教員が、教員としての資質を高めようと努力することや、大学運営に積極的に携わろうとするのは、大学の構成員として当然のことです。しかし、大学人としてのアイデンティティの土台には、まず研究者としてのアイデンティティがあるべきと考えます。科研費等の研究助成をはじめとする外部資金の獲得は、研究時間の確保が困難な中にあっても研究を前に進める上で励みとなるはずです。大学としても研究費獲得に資する組織的支援ができるよう、支援体制を強化したいと思っています。
第三の課題は、多様性と包摂性を尊重する大学づくりです。一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整え、互いに尊重し合う文化を、教職員と学生の両方に育むことが、大学の持続的な発展につながると私は考えています。大学には様々なバックグラウンドを持つ学生や教職員が集っています。国籍、言語、文化、年齢、ジェンダー、セクシュアリティ、障がいの有無などによって、同じ人間でも、そのありようには「違い」が生じてきます。自分と言語や経験が異なる相手を理解できない、あるいは「コミュニケーションが面倒だ」と感じることもあるかもしれません。昨今の日本社会における排外主義の台頭の背景にも、こうした「違い」に対する不寛容があるように思います。しかし、「違いや変化に不寛容で、構成員が均質化された集団からは、イノベーションは生まれにくい」と言われています。つまり、「組織の多様性はその組織を強くする」と考える方が、組織の発展につながります。そう考えると、本学にはもっと多くの女性や外国人、若手、障がいのある人々がいる方が望ましいと考えます。本学は、引き続きジェンダーバランスや多様性を念頭に置いた人事を推進していきます。同時に、互いの「違い」を個人の特性として認め、コミュニケーションがストレスやハラスメントの原因にならないよう、互いが同じ大学の一員として平和的に関わろうとする、意識の高い組織づくりを心がけていただくよう、皆様にもお願いしたいと思います。
社会は今、予測困難な時代にあります。大学もまた、従来の枠組みや慣習にとらわれていては、変化に対応できません。だからこそ、私たちは挑戦し続けなければなりません。挑戦には不安が伴います。しかし、挑戦のない組織に成長はありません。本学が新年に向き合うことになる課題は、簡単に解決できるようなものではないかもしれませんが、私は、私たちが互いに支え合い、知恵と力を結集すれば、どんな困難も乗り越えられると信じています。
最後に、改めて申し上げます。琉球大学が今年一年、どう成長できるかは、ここにいる私たち一人ひとりの働きにかかっています。学生の成長を支え、研究を発展へと導き、地域社会に貢献するという使命を胸に、教職員一丸となって歩んでいくことが、大学の力となり、社会の希望となります。
どうか本年も、変わらぬご理解とご協力をお願い申し上げます。
令和8年1月5日
琉球大学 学長 喜納育江
