お知らせ

法務研究科法務専攻3年の高嶺真帆さんが、「刑事政策に関する懸賞論文」で佳作を受賞

 法務研究科法務専攻3年の高嶺真帆さんが、日本刑事政策研究会が募集した「刑事政策に関する懸賞論文」で佳作を受賞しました。

 「刑事政策に関する懸賞論文」は日本刑事政策研究会が住み良い社会を作り上げるためには、刑事政策思想の普及が特に重要であるとの観点から、日本の将来を担う大学又は大学院の学生を対象として、刑事政策に関する論文を募集し、優れた論文に対して賞状及び賞金を贈呈するものです。


マオリ族の伝統的な彫刻 Whakairo(ファカイロ)
ニュージーランドの修復的司法は、マオリ族の紛争
解決アプローチを少年司法制度内に取り入れたことが
起源である。



訪問した Oranga Tamariki(子ども庁)

論文タイトル

ニュージーランドにおけるFamily Group Conferenceを活用した被害者と加害者(少年)の対話の可能性―刑の執行段階における心情等聴取・伝達制度の導入を受けて―

概要(要旨)

 2023年12月から「刑の執行段階における心情等聴取・伝達制度」(心情等伝達制度)という制度が導入されました。これは、被害者の気持ちなどを、刑務所などに収容されている受刑者などに伝えるという制度です。被害者の気持ちを知った受刑者の反応は、被害者に伝えられます。このように、心情等伝達制度により、被害者と受刑者の一種の「やり取り」が始まります。
 ニュージーランドに住むマオリ族は、昔から酋長を仲介者として、被害者と加害者の対話(「やり取り」)がされていました。その文化は今も「修復的司法」という手法として制度化され、「Family Group Conference」(FGC)がつくられました。この制度は、子ども庁が中心となり、現在、活発に活用されています。そこで、「心情等聴取・伝達制度」と「FGC」の共通点から、日本の心情等聴取・伝達制度をさらに発展させるにはどのようにすべきかを検討しました。
 この論文は「罪と罰」という雑誌の61巻2月号(2024年3月)に掲載されます。ご興味があれば、ぜひご覧ください。

受賞者コメント

 ニュージーランドは、多くの先進的な犯罪被害者支援制度を導入しており、今日では犯罪被害者支援先進国のひとつです。その経験は、日本の制度を考える上で大きなヒントとなるものが多いと感じています。将来は、法曹になるとともに研究者として、社会課題の解決に取り組んでいきたいと考えています。そのために必要な知識と実践的な力を身につけるべく、研鑽を積んでいく所存です。
 この度の受賞は、御指導頂いた法科大学院の齋藤実先生をはじめ、現地視察を受け入れてくださったニュージーランドの子ども庁、御支援頂いた皆様のおかげでございます。この場を借りて、深く感謝申し上げます。

指導教員(法務研究科 齋藤実教授)コメント

 「刑事政策に関する懸賞論文」は、刑事法学者の登竜門としても位置付けられており、琉球大学で初めて、高嶺真帆さんが受賞したことを心から祝福します。
 本学法科大学院では「論文指導」という科目を設け、弁護士として実務で活動し、同時に研究もできる「ハイブリットな法律家」の養成をしています。実務と研究を行うことで、法律家としてより一層飛躍することが可能となります。現在、このような法律家のニーズは高く、今後、社会でのニーズがますます高くなります。「ハイブリットな法律家」を目指す多くの方が、本学法科大学院にご入学されることを心待ちにしています。

※参考※
一般財団法人日本刑事制作研究会