笹井隆秀(TAKAHIDE SASAI)

笹井隆秀(TAKAHIDE SASAI)
011
理学部海洋自然科学科 2011年卒業
笹井隆秀さん (兵庫県出身)

2011年3月  理学部海洋自然科学科 卒業
2013年4月  理工学研究科海洋自然科学専攻 博士前期課程 修了
2013年4月  神戸市立須磨海浜水族園 入社  飼育教育部魚類飼育課(飼育員・学芸員)
2019年3月  一般財団法人沖縄美ら島財団 入社  総合研究センター動物研究室(研究員)
2021年4月  水族館管理部 海獣課ウミガメ係(飼育員)兼 総合研究センター動物研究室

琉球大学へ進学を決めた理由を教えてください!

爬虫類の研究をできる研究室があったためです。小さいころからカメやヘビ、カエルなどが好きで、大学進学を考える時に爬虫類の研究ができる大学を探しました。
また、家族旅行で黒潮のあたる、高知や和歌山の海へよく行っていたため、南国の海への憧れもありました。オープンキャンパスなどは参加せず、2次試験の際に初めて沖縄に来ました。

大学在学中の思い出や印象深かった講義について教えてください!

在学中の思い出:

・学生寮での10人生活は、高校生活や実家暮らしにはない刺激がたくさんあり、良くも悪くも多くの常識が覆されました。結局、修士課程卒業まで、6年間寮生活でした。
・卒業研究は西表島のビーチで、リュウキュウイノシシがウミガメの卵を食べることについて調査したのですが、陸路がなかったため、漁船でリーフ(サンゴ礁)の外側まで渡してもらい、海に飛び込み浜まで泳いで調査したのが良い思い出です。

卒業研究のポイントまでは漁師さんの船で移動

離島調査は荷物をボートに積んで泳いで渡ることも

サークル:琉球大学ウミガメ研究会ちゅらがーみー 

学部4年生の時にウミガメの調査・研究をするサークルを友人たちと立ち上げました。フィールド調査の手法や学会での発表方法などを学ぶことができ、今の仕事にもとても活かされています。黒島のウミガメ研究所での合宿は、研究所のありとあらゆる業務を自分たちで工夫しながらやらせてもらい、自分で考えて行動することの大切さを学ぶなど、大変成長させてもらいましたし、毎日のように星空の下でBBQをしたことも良き思い出です。

サークルの合宿で、黒島研究所のウミガメのプール掃除中の笹井さん

役に立った講義:

・生物学実験 器具の使い方やレポートの書き方など、生物の研究をする上で必要な基礎を勉強することができた。
・生物学野外実習 学部2年生の時に、西表島に1週間ほど滞在し、山や干潟の安全な歩き方から各種野外調査の方法などまで、今に繋がる多くのことを学ぶことができた。

(左:笹井さん)ダイビング免許を学部の1年生で取得

トカゲ調査の一コマ(許可を得て触っています)

思い出深い講義:

・乗船実習 非日常で、とても楽しかった。皆が船酔いして食べられなかったご飯を、好きなだけ食べられた。
・International Field Course 大学院の時に、台湾の大学と共同でフィールド実習を行う授業があった。現地の学生と共に台湾の様々な野外フィールドを回って研究発表を行うもの。フィールドも良かったが、夜市などを一緒に回るうちに、現地の学生とも仲良くなれ、今でも連絡を取り合っている。

正直なところ、講義内容の詳細はあまり思い出せませんが、大学生活全体を通して、「楽しく生きる」ことを学んだと思っています。入学前と卒業後ではあらゆる物事に対する価値観が大きく変わりました。

就職活動と現在のお仕事について教えてください

・修士課程を終えたタイミングで、神戸市立須磨海浜水族園という水族館に飼育員兼学芸員として入社しました。元々は、そのまま博士課程に進学するつもりだったので、一般的な就活らしいことはしませんでした。水族館の方針で、爬虫類や両棲類の展示を増やす流れになっていたのですが、受験者のほとんどは海獣か魚類の希望者であったため、運よく私が採用されたのだと思っています。飼育だけでなく、お客さん向けのイベント解説や特別展の企画・実施なども行っていました。在職中、JICAのプロジェクトでブラジルに渡航し、現地の博物館リニューアルやマナティ展示施設の改修に関わりました。

・現在の会社(一般財団法人沖縄美ら島財団)には転職で入社しました。飼育ではなく、研究職に就きたいと考えていた際に、ウミガメとタイワンハブ(外来生物)の研究を行うことができる人材を募集していることを知り、受験しました。ウミガメについてはサークル活動を通して勉強し、研究活動も行っていたことが活かされると考えました。また、タイワンハブは学生時代に、先生や先輩の研究手伝いで他種のハブを扱った経験があったこと、前職でウミヘビやアナコンダなどの危険ヘビ類を扱っていたことや外来生物のカメ類の調査研究をしていたことなどから、ニーズに応えられると考えました。

 

タイワンハブの講演会にて。右手にヒメハブ、左手にタイワンハブの標本を持つ笹井さん(写真提供:一般財団法人沖縄美ら島財団)

タイワンハブのトラップ確認(写真提供:一般財団法人沖縄美ら島財団)

・約2年間、総合研究センター動物研究室でウミガメやタイワンハブの研究をした後、沖縄美ら海水族館の海獣課に異動となり、現在は主にウミガメの飼育員をしつつ、研究も細々と続けています。ウミガメの研究は、沖縄島の海岸に死亡漂着したウミガメの種組成や海洋ゴミの誤飲問題を主に取り扱っています。タイワンハブは世界自然遺産に登録されたやんばる地域への分布拡大防止策の検討や在来生物へ与える影響の調査、捕獲効率の良い新型捕獲トラップの開発などを行っています。また、沖縄という立地(亜熱帯の海)を活かし、国内外の大学や博物館と共同でウミヘビの調査・研究も進めています。

ウミガメの産卵調査の様子(写真提供:一般財団法人沖縄美ら島財団)

死亡漂着したアオウミガメを計測する様子(写真提供:一般財団法人沖縄美ら島財団)

学生の時の良い経験(海や山で自然を相手に昼夜を問わず遊び、卒業研究や修士課程で得た知識や研究に対する姿勢など)は社会人になってからもとても役に立っています。

琉球大学を目指す学生へのメッセージをお願いします!

沖縄は自然豊かな場所で、似た趣向をもつ学科の友人たちと、好きな時に好きなだけフィールド(山、海、川、大学内の農場など)に出ることができたのが何よりも楽しかったです。

本土と陸続きではない、オキナワという未知の世界(自然も文化も、一人暮らしも)に、勇気をもって一歩を踏み出してきた人が多いからか、未知のものにチャレンジすることに対するハードルが低い友人が多く、「気になったものはとりあえず何でもやってみる」という感覚を共有できたことが、楽しかった理由かもしれません。学部学科を超えて、様々な友人ができるので、気の合う仲間たちと、一生の思い出に残る楽しい時間を過ごしてください。

ウミヘビの調査地へ。沖縄は朝日も夕日もきれい