平成18年度大学院入学式
告  辞
 
 本日ここに、関係者の皆様方の御臨席のもとに、めでたく平成18年度琉球大学大学院入学式を挙行するに当たり、入学を許可された学生の皆さん、並びに御家族の皆様方に対し、心から御慶びを申し上げます。大学院進学を果たされた皆さんの、これまでのたゆまぬ努力と、皆さんを支えて下さった御家族、及び指導に当たられた先生方の御苦労に対し、改めて敬意を表します。
 琉球大学大学院が本日迎えます新入生は博士課程57名、修士課程または博士前期課程295名、専攻科8名、法務研究科専門職学位課程30名、計382名であります。なお、今年度学部への入学者は、1,648名で、学部の入学式は本日午前10時から体育館で滞りなく挙行されましたことをここに報告いたします。
 さらに次のことを付け加えさせていただきます。本学は鹿児島大学大学院連合農学研究科の構成大学であり、今年4月同研究科に入学を許可された47名のうち10名が本学の農学部で研究を行います。また、本学の理工学研究科特別コースへの外国人入学者約20余名は今年10月に入学が許可される予定であります。
 皆さんを本学の大学院に迎え入れるにあたり、大学の理念について手短に考えてみたいと思います。ドイツの哲学者カール・ヤスパースは大学の理念は「学問とその教授」だと言っています。皆さんはそんなことは解りきったことだと思いますか。実は多くの大学人の間からはこのヤスパースの言葉は今日では、もはや幻想にすぎないとの声が聞かれます。なぜなら大学は産業社会の構造変化とともに、その使命もしくは理念の変容を強いられて、今日に到っているからです。今日の大学では学生たちに対して、職業準備教育を提供すること、就職について有利な附加価値を与えることが大きな使命のひとつとなっています。
 このような変化の流れの中で、大学の学部においては教養教育と職業準備教育を行うべきであり、専門教育は大学院修士課程で実施されて良いということ、また研究者の養成は当然のことですが、博士課程の役割である、と言われてからすでに数十年が過ぎています。さらにまた、近年、法務研究科の設置に見られるように、高度の専門職大学院の重要性が指摘されています。
 このような大学院の状況下で皆さんはどのように自分自身を位置づければ良いのか、あれかこれかで悩むこともあるかと思います。皆さんが自分自身の大学院進学の動機をあらためて考え、自分自身の資質の方向性についても熟慮し、自分にふさわしい良き研究テーマを見い出し、良き指導教員と出会うことが出来ますよう願って止みません。
 研究テーマの設定にあたっては奇を衒って迷路に入り込むことなく、学問の正しい道を歩んでください。
 経済的理由で就学困難な者にあっては、日本学生支援機構の奨学金制度を大いに活用してください。特に、同機構の第2種の奨学金制度は採択率が高いので応募してください。皆さんが奨学金を得て学ぶことが出来れば、アルバイトで貴重な勉学の時間を失うことがないばかりか、今後の人生において自立心を培うという意味においても有意義と考えます。
 わが国の国立大学は法人化後3年目を迎えます。各大学はゆるやかに種別化に向かいつつあります。すなわち、それぞれの大学が個性化し、固有の顔を持つ大学になることが強く求められることになります。本学は沖縄の自然の特性、固有の歴史、文化に根差した研究によって特化することを重要な戦略としています。競争的研究資金が配分される21世紀COEプログラムとして本学のテーマ「サンゴ礁島嶼系の生物多様性の総合解析」が採択されていますが、この研究テーマが採択されましたのも本学の戦略のひとつであり、この分野の若手研究者の育成とともに世界的最高水準の研究拠点形成に向けて、現在総計約
70名の研究者がこのテーマに取り組んでいます。
 地域特性に根差した教育研究によって特化するのみではなく、同時に地域特性と直接的に結びつきにくい基礎的研究の推進も忘れてはなりません。
 終わりに、皆さんが大学院での勉学と研究を行う過程で人格も陶冶され、単なる科学技術者としての域を超えて、国際性豊かで、平和を愛し、幅広い教養を身につけた知識人として、人類の幸福のために貢献する優れた科学者となりますよう願いつつ、歓迎の言葉といたします。
 
             平成18年4月5日
国立大学法人琉球大学長 森田孟進