琉球大学学報 October1999

『琉球・海外交流史の跡』

天 使 館 跡

−那覇市歴史標示板−

 

那覇市医師会の敷地となっている天使館跡(左)と、『中山伝信録』に見える天使館の図

 那覇市の西消防署の裏に那覇市医師会・同臨床検査センターと沖縄郵政管理事務所(東町郵便局)がある。その当たりが、琉球王国時代の「天使館」の敷地だったと言われ、那覇市による標示板がある。那覇市東町26番地である。

 天使館とは、中国の皇帝の使者として琉球に渡来した冊封使節一行が、琉球滞在中に宿泊所として利用した施設である。冊封使は、琉球で新しい国王が即位するごとに、中国の皇帝がその即位を認証するために派遣するもので、一行を迎えた琉球では、国王一代の盛典(盛大な式典)の主賓として、国をあげてその接待に当たった。

 徐葆光(尚敬王の冊封副使)の『中山伝信録』の記事と図によると、天使館は中国の役所風の建物で、南に向いている。周囲を堅牢な石垣で囲み大門が設けてある。その大門を守るため、東西の石垣を延長するように外柵があり、南側は外柵と堀で閉じられている。

 外柵の東西に門があって、それぞれの門内に守衛所のような建物があり、外柵の外よりの角に旗竿が2本立ち「冊封」の旗が風になびき、八角の亭がある。敷地中央を貫く石畳道によって全体が左右対照になり、その線を基準にして建物が配置されている。大門を入ると、東西に役人の詰所があり、第2門(天澤門)をくぐると、石畳道の中心線上に正堂(敷命堂)と後房があり、正堂と後房をつなぐ回廊には屋根がついている。この二つの建物が、冊封正副使の宿泊所となっていた。その奥に長風・停雲の二つの楼閣があった。

 天使館跡は、中国と琉球の交流史を彩る歴史的な重要拠点の一つである。中国からの使節が帰国した後は、天澤門内は閉鎖され、大門内の東西二つの建物が砂糖座として利用され、貢納のための砂糖樽の製造所となっていた。

法文学部教授・上里賢一
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