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学内ニュース

 
(2006/02)


附属中学校創立20周年記念式典・祝賀会の開催



祝辞を述べる浜田実行委員長
 2月4日(土)午後3時から教育学部附属中学校体育館において同校創立20周年記念式典が執り行われた。
 式典は,出席者全員による校歌斉唱で始まり,福永忍実行副委員長(同校副校長)からこれまでの実行委員会の取り組みとして事業経過報告があった。
 続いて,浜田京介実行委員長(前PTA会長),泉惠得校長,仲里善春PTA会長から式辞があり,浜田委員長は「短い取組期間ではあったが,PTA会員や卒業生、企業の積極的な参加で部活動部屋の整備という目的を達成することが出来た」と挨拶した。
 続いて,森田孟進学長と稲嶺成祚二代目校長から祝辞があり,森田学長は「文武両面での活躍がめざましいことは,大学として誇りに思う。沖縄の地域特性を持った国際性豊かな人材として成長してほしい。また、大学としても附属学校の教育環境の整備充実に努力したい」と祝いの挨拶があった。

祝辞を述べる森田学長
 引き続き,名嘉庸平前生徒会長から「創立20年は,人間で言えば二十歳の成人にあたります。先輩達が築き上げた良き伝統を引き続き継承していきたい」と挨拶があった。
 そして,同記念事業として部活動部屋整備資金の目録が浜田委員長から泉校長へ贈呈された。
 最後にこれまでの学校運営やPTA活動に貢献のあった元校長や元PTA会長らに学校教育功労賞,特別功労賞として感謝状の贈呈があり,式典を終了した。
 式典終了後,午後4時半から同体育館において祝賀会が催され,會澤卓司教育学部長の挨拶に続き,瀬名波榮喜元教育学部長の乾杯の発声により懇親が行われ,生徒や職員OB,実行委員や保護者から余興があり,約350人の参加者は、未来へ向けて限りなく発展することを確認しつつ、創立二十周年を大いに祝った。

推薦入学(21世紀グローバルプログラム)で志願者51名に対し20名の合格者を発表


 平成18年度琉球大学入学者選抜試験の推薦入学(21世紀グローバルプログラム)の合格発表が2月13日(土)11時に法文学部駐車場で行われた。  本入試は,平成17年度から学生受入を開始しており,教職員が一体となり,直接高等学校に出向き,本入試の趣旨を説明した結果,51名の志願者があり,20名の合格者を発表することとなった。  なお,推薦入学I,推薦入学(21世紀グローバルプログラムを除く。),社会人特別選抜,帰国子女特別選抜,私費外国人留学生選抜についても同日,各学部において発表があった。  また,本学のホームページでも合格者の受験番号を公表し,数多くのアクセスがあった。

理工学研究科博士後期課程1年次三浦さおりさんが日本学術振興会の特別研究員に採用

 理工学研究科博士後期課程1年次三浦さおりさんが平成18年度から日本学術振興会の特別研究員、DC2に採用された。特別研究員とは、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的として、大学院博士課程在学者及び大学院博士課程修了者等で、優れた研究能力を有し、大学その他の研究機関で研究に専念することを希望する者を採用し、研究奨励金を支給する制度である。毎年大勢の申請者がいるが、採用率は低く難関となっている。本年度は琉球大学からはポスドクを含めてただ一人の採用となった。三浦さんは、「今回、このような形で研究が評価され、学振特別研究員に採用されることとなり、大変嬉しいです。瀬底実験所の多くの方々に様々な御尽力を頂き、感謝しています。今後は、特別研究員という肩書きのプレッシャーに負けず、さらに、一生懸命研究に励み、結果を残していきたいと思います」と意気込みを語った。
 三浦さんは、修士課程で熱帯サンゴ礁海域に生息するクマノミの性決定機構について調べた。クマノミは一夫一婦でイソギンチャクに共生しており、雌がいなくなると雄が雌に性転換することが知られている。三浦さんは、卵から育てた稚魚の生殖腺の分化過程を調べたところ、全ての子供は卵巣を持つ雌となり、生まれつきの雄がいないことを発見した。その後しばらくして、卵巣の中に精巣組織が分化、発達することで全個体が雄になるという他の脊椎動物では見られない特殊な性決定を行うことをはじめて明らかにした。現在このような特殊な現象を利用して、性ホルモンの性決定に果たす役割について研究を進めている。クマノミは、ディズニー映画のファインディングニモにより広く一般の人にも知られていることから、三浦さんの興味深い研究は小中高生の理科離れ阻止にも今後一役かうものと期待される。

西里喜行教育学部教授が伊波普猷賞を受賞


西里喜行教授
 沖縄文化や学術振興に寄与した研究や著作へ贈られる伊波普猷賞(主催・沖縄タイムス社)の2005年度第33回受賞作として、西里喜行教育学部教授の「清末中琉日関係史の研究」(京都大学学術出版会)が選ばれた。
 同書は、琉球「所属」問題を、従来の「日本・中国」、「琉球・中国」、「琉球・日本」という「二国間」関係史の範疇に限定せず、中国・琉球・日本の三国関係を基軸とする多国間関係史の中に位置付け、琉球の「主権」問題として論究した初めての研究書であることが評価されたものである。
 受賞にあたって西里教授は次のようにコメントした。
 「伊波普猷賞の受賞を大変光栄に思います。今回の受賞作は十数年来の研究の一部でまだ未完成品ですので、今後もさらに研究を続け、清末にとどまらず、中琉日関係史を通史的にまとめてみたいと考えています。今回の受賞を今後の研究のスプリング・ボードとして位置づけたいと思います」
 なお,贈呈式、受賞記念講演及び祝賀会は2月6日に那覇市内のザ・ナハテラスで行われた。

外国人留学生特別コース学生がIEEEで2賞を受賞


受賞した Ahmed Yousuf Saber さん
 理工学研究科博士後期課程外国人留学生特別コース(亜熱帯海洋環境技術科学特別コース亜熱帯環境工学系)2年次のAhmed Yousuf Saberさん(バングラディシュ出身)が、IEEE PES(Power Engineering Society)Japan Chapter2005年度学生論文発表賞と、IEEE IES(Industrial Electronics Society)Student Scholarship賞を受賞した。
 PES学生論文発表賞は、電力及び電力系統技術を研究する学生研究者の海外における論文発表の奨励を目的として、優秀な論文の海外発表者に賞状と副賞の賞金を授与するものである。今年度は数少ない受賞者の中で、東京大学や早稲田大学の院生とともに、Ahmedさんは6名の受賞者の中に見事選ばれた。また、IES Student Scholarshipの方は、香港で行われた国際学会で発表した学生の中でわずか2名のみに与えられ、インドの学生と共にAhmedさんが受賞した。
 Ahmedさんの研究内容は、発電機の運用の経済性ならびに信頼性の最適化問題に関するものであり、昨年度に入学してからのわずか1年数ヶ月で5本の論文を発表している。今回の受賞に対して、「研究のアプローチの仕方、論文の書き方は千住先生のラボでゼロから学んだ。千住智信先生、そして研究室の仲間に感謝したい。今後も論文を沢山発表し、学術の発展に貢献したい」と喜んだ。また千住教授は「彼はよく頑張っている。留学生の指導は大変であるが、学生が在学中に十分な実績を残せることは重要だと思う」とコメントした。


ひらめき☆ときめきサイエンス「マングローブ林のおもしろさ大切さ」を実施


馬場教授からマングローブの不思議さ、大切さを聞く
 2月25日(土)、西表島で中学生を対象とした「ひらめき☆ときめきサイエンス-ようこそ大学の研究室へ?KAKENHI」が実施された。これは科学研究費補助金による研究成果の社会還元・普及事業のひとつとして、日本学術振興会が本年度から開始したプログラムであり、本年度は全国の22大学で35件のプログラムが採択され、本学からも2件が採択・実施されることになったものである。その2回目にあたる今回は、「熱帯生物圏研究センター西表実験所」を会場とし、中学生を対象に「マングローブ林のおもしろさ大切さ」をテーマに西表実験所馬場繁幸教授によって実施された。
 また、社会還元・普及事業推進委員会の横山広美委員(総合研究大学院大学上級研究員)、及び学術振興会から小寺孝太郎総務係長ほか1名も視察のために東京から参加していただいた。
 プログラムは西表実験所の講義室で始まり、マングローブの基礎知識を学んだ後、参加者全員が着替えて、近くのマングローブ林に移動し、野外での体験学習を行った。
 最初に研究推進戦略室長の佐藤教授から「沖縄の自然は非常に珍しいものだが実際に住んでいる人はそれに気付かないことが多い。皆さんには、自分達の身近にあるマングローブの不思議さ、そしてその大切さを学ぶなかで、是非、科学する心を育ててほしい」と挨拶があり、横山広美委員からも「このプログラムは大学でどういう研究をしているのかを知ってもらうことを目的としており、今日は大学生になったつもりで参加してほしい。科研費とは日本の研究を支えてきた補助金であり、皆さんに研究を頑張っている先生方を見て頂きたい」との話があった。馬場教授の講義では、マングローブの木が重くて水に沈むこと、高さ60メートル以上に成長する種類もあること、年輪が無いこと、葉が塩辛いことなどの説明を聞きながら、参加者は実際にマングローブの切株を手に取ったり、葉をかじってみたりしながら、興味津々で講義に聴き入っていた。

野外ではマングローブ林棲む生物を手にとって観察
カヌーを漕いでヒナイサーラの滝を目指す
 マングローブ林内での体験学習には、馬場教授の他に、仲里長浩 東海大学沖縄地域研究センター講師、貝類・魚類担当として池辺裕子氏、山地の植物担当として石垣長健 西表実験所技術職員及び津嘉山健技術職員、農学部学生等々が参加してプログラムをサポートした。参加者は幾つかのグループに分かれて野外観察を行い、講義で覚えた木の名前を言い合ったり、グループの担当者に矢継ぎ早に質問をしたりしていた。また担当者も、時折足を止めては様々な動植物の特徴を丁寧に説明していた。海岸のマングローブ林で昼食をとった後、さらにヒナイ川をカヌーで溯る体験が実施された。川岸に見えるマングローブ林は海岸とはまた違った景観を見せ、参加者は初めて体験するカヌーをおぼつかない手つきで漕ぎながら、その様子を興味深く観察していた。上流でカヌーを降り、さらにヒナイサーラの滝までの山歩きの途中でも、西表島特有の珍しい植物や風景を目にすることができた。ヒナイサーラの滝は、前日までの雨で滝の水量が増しており、その豪快さに参加者は圧倒された様子であったが、中には服を着たまま滝つぼに飛び込む元気な中学生もいた。
 体験学習後には、実験所に戻って閉会式が行われ、新本光孝 熱帯生物圏研究センター長から「冒頭に佐藤教授がマングローブの大切さを学んでほしいと言われたが、正直に、学ぶことができたと思う人は拍手をお願いしたい」との言葉があり、会場からは盛大な拍手が起こった。また、日本学術振興会 小寺係長から「何故だろう?と思うことが研究の始まり。研究は楽しいものだということが分かったと思う。是非、大学に進んで、立派な研究をしてほしい」との挨拶があった。最後に修了証書の授与式があり、参加者のなかから将来優秀な研究者が育ってくれることを期待して馬場教授から一人ひとりに「マングローブ未来博士号」の証書が授与された。今回参加した中学生は西表島に初めて来た者も多数おり、参加者からは「山猫のフンを見つけた」、「カヌーがすごく面白かったが、滝までの山道が大変だった」、「またあったら次も来たい」などの率直な感想が聞かれたが、何よりも前日夜半までの大雨が、当日の朝には奇跡的に上がり、青空のもとで野外学習を含む全プログラムをケガ、事故もなく終了できたことが幸いであった。

マングローブの未来博士号を授与
 今回のプログラムには、石垣島・西表島の中学生60名余りの参加希望が寄せられた。しかし、一度に受け入れられる定員の関係で、今回は40名余りの中学生と引率の教諭が対象となった。このため、今回のプログラムに参加できなかった希望者21名には、後日(3月4日)、馬場教授によって同様のプログラムが別途に実施され、参加を希望した全員がプログラムを修了することができた。佐藤教授によれば、「沖縄のサンゴ礁・マングローブ林は本土に住む者にとっては極めて魅力的な自然であり、観光資源として注目されるのは良く分かるが、その一方、これらの自然生態系は地元の若い世代の人材育成、特に科学する芽を育てるという意味でも大きく貢献できるものである。本学は、今後、このようなかたちでの地域貢献を多様に果たしていく必要もあるのではないか」ということであった。また、馬場教授からは「今後は、是非、中・高の教員を対象にしたプログラムを計画してみたい」という意見が聞かれた。

ITを活用した教育の学内研究発表会を開催

研究発表会の様子:中央は岡崎威生
工学部講師
 総合情報処理センターにおいて、「ITを活用した教育の学内研究発表会」がFD活動の一環として大学教育センターと共催で2月14日(火)に開催され、約30名の教職員および学生が参加した。
 当発表会は、情報化の推進に関する中期目標・中期計画に沿って、中期計画達成重点プロジェクト経費により実施された。このプロジェクトは以下の内容を含んでいる。(1)ITを活用した教育、すなわちe-learningシステムを活用し、遠隔教育を推進するため、全学から募った研究グループの教員が、一部の講義でこれらを試行する、(2)一部は、公開授業や公開講座等で試行し、効果的な実施方法を検討する、(3)これらを試行した結果を学内研究発表会で紹介し、ITを活用した教育の啓蒙を図る、(4)この事業ではなくてもITを活用した教育の事例があれば発表していただき、ファカルティ・ディベロップメントとして役立てる、(5)マルチメディアを活用した大学教育に関する汎太平洋国際会議に琉球大学としてネットを介して参加する。この中の(3)(4)が当研究発表会であり、(1)(2)(5)の内容も発表された。
 高良富夫総合情報処理センター長は、冒頭で「ITに興味はあるがまだ活用していないという教員にぜひ見て欲しい。また、高校では情報科目が新設され、必修として受けた学生が4月から入学する。大学におけるIT教育も変わっていくべきだ。発表内容を、IT関連教育のファカルティ・ディベロップメントとして利用していただきたい。」と挨拶した。
 発表は、「学生によるオンライン授業評価の実施と運用」岡崎威生 工学部講師、「情報教育の効果的実践の一報告 −情報科学演習の例−」長山格 工学部助教授、「保健学研究科特論におけるe-learningシステムの試用」高倉実 医学部教授、「映像を中心としたIT教育のコンテンツ開発と著作権問題の動向」大角玉樹 法文学部助教授、「総合情報処理センターにおける遠隔講義の取り組み」高良富夫 工学部教授、「情報処理教育カリキュラム見直しのための高校教科「情報」の現状調査」黒田登美雄 農学部教授、「 WebClassの利用:対面(F2F)授業の補充的な役割として」安座間喜松 大学教育センター非常勤講師の内容で行われた。
 また、当研究発表会は、一層の活用を図るために、論文集を作成し、すべての学科に配布した。
 
工学部情報工学科卒業研究発表会【英語セッション】

英語による卒業研究発表会の様子
 情報工学科では「IT分野におけるグローカル・カンファレンスの開催とそれに向けての英語プレゼンテーション教育」として、4年次14名を対象に、11月より英語セミナーを実施し、2月28日(火)、セミナー受講者の英語による卒業研究発表会を工学部1号館にて開催した。
 当英語セミナーは、平成16年度大学教育重点化経費により開始したプロジェクトであり、工学部名嘉村盛和教授及び岡?威生講師、留学生センター金城かおり講師をプロジェクトコーディネーター、John Purves氏、Keith Gordon氏をセミナー担当講師として、大学院進学予定者を対象に、専門技術に関する国際コミュニケーション能力及びプレゼンテーションスキルの向上を目的として実施しているものである。セミナーでは、ディベート練習、プレゼンテーション練習、留学生との交流会などを行い、英語による卒業研究発表会に挑んだ。
 発表会では、約60名が参加する中で、受講生は緊張しながらも堂々と発表を行った。質疑応答では、英語による質問に、言葉に詰まる場面も見られたが、概ねはっきりと英語で受け答えがなされていた。
 
集中講義「EU研究入門」を実施

講演を行う Dr. Michael 氏
 2月20日(月)から2月22日(水)の間、附属図書館1階多目的ホールにて、集中講義「EU研究入門」を実施した。講師として法文学部金城宏幸助教授、Till Weber助教授、Sophie Palvadeau助教授、石川隆士助教授の他、EU駐日欧州委員会代表部副代表・公使のDr.Michael Reitererが特別講師としてEU大使館から招かれ、英語で講義を行った。
 当集中講義は、来年度前期に法文学部国際言語文化学科で開設予定の、ヨーロッパに短期留学・研修を行う講義である「海外文化研修」に先駆けて、研修前に基礎知識を学べるようにと開講したものであるが、他学部からの希望も多く、約80名が受講した。
 講義では、受講生はグループに分かれて政治、経済、文化等のテーマで調査し、最終日に発表を行った。
 担当の金城法文学部助教授は、「EU専門の講義は恐らく県内初だろう。受講希望者が予想よりずっと多く、学生の関心の高さが伺える」と話した。
 なお、附属図書館は全国19カ所あるEU資料センターとして、県内で唯一指定を受けている。
 
琉球大学における感染症研究拠点形成にむけた取り組み -感染症若手研究者沖縄フォーラムを終えて-
琉球大学研究推進戦略室長 佐 藤 良 也(医学部 教授)

研究成果を発表(第1回フォーラムより)

抱える課題について討論
(第2回フォーラムより)

沖縄の伝統芸能を体験
(第3回フォーラムより)

若者らしく勉強の合間にスポーツで汗を流す
(第3回フォーラムより)
 2001年の炭疸菌テロから2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)パニック、そして現在の高病原性トリインフルエンザ(H5N1)の脅威など、我々はかつてない感染症の恐怖に曝されている。しかもグローバリゼーションの進むなかで、感染症に対する社会認識はこれまでとは大きな変化をみせつつある。すなわち、感染症は人類の健康に対する最大級の脅威であるだけでなく、地域格差、貧困、差別、社会不安などを生む社会的問題であり、そして地域経済や社会生活に深刻な打撃を与える生活問題としても大きくクローズアップされているところである。
 そのような中で、我が国文部科学省は、これらの感染症の脅威に対応するために感染症の研究強化に向けた取り組みを加速させている。本学は、医学部、遺伝子実験センターが中心となって、この感染症研究拠点形成に向けた取り組みに積極的に参画しており、その現状と意義について紹介する。
小笠原諸島を除けば、我が国で唯一の亜熱帯地域に位置する沖縄県は、その地域環境が多くの感染症を育む熱帯地域と共通する部分が多く、事実、日本本土に比べて多くの感染症が今なお高率に見られる地域である。例えば、全国一高いHTLV-1の感染率、先進国のなかで唯一エイズの原因となるHIV感染率が増加している我が国にあって沖縄はそのワーストグループのひとつ入っていること、ウイルス感染を背景とした高い肺癌や子宮癌の発症、カポジ肉腫、ウイルス性脊髄壊死症などの特異なウイルス感染症の発生、中・高年齢者の1割近くに見られると言われる糞線虫感染や沖縄が主な流行地である広東住血線虫症といった寄生虫病の多発などは、沖縄の医学・医療が今日なお抱える現実的な問題である。加えて、沖縄ではかつてマラリア、フィラリア症、日本脳炎、デング熱など、重要な熱帯感染症が猛威をふるった時代があった。例えば、第二次世界大戦前後に年間数万人もの患者発生を見ていたマラリアは、戦争中に軍略的な理由で住民をマラリア浸淫地に強制移住させたことによって凄惨な住民被害をもたらし、近年まで戦後保障という社会問題化していたことなどは、あまり知られていない事実である。戦後、沖縄の先人達はアメリカの施政権下という困難な状況のもとでの地道な努力によって、今日その殆どを制圧したが、沖縄の地域環境は、これらの熱帯感染症が再び定着、流行する素地を依然として残している。また、沖縄県は近接する東南アジア地域等との国際交流が盛んであり、国外から持ち込まれる輸入感染症の問題や、多くの米軍施設を抱える沖縄にとって生物テロ発生の危険性も看過できない問題のひとつである。さらに、本土から遠く離れ、周囲を海にかこまれた島嶼県である沖縄にSARSのような新興感染症が持ち込まれた場合、住民の地域社会生活に壊滅的な打撃を及ぼすことは明らかである。
これらの状況を考えると、沖縄地域に感染症研究の拠点を形成し先導的な感染症研究を推進することは、本学(沖縄)ばかりでなくわが国における感染症問題の解決にとっても重要な社会的意味を有しているものと思われる。
幸い、本学では先の九州・沖縄サミットにおいて世界の感染症対策に先進諸国が積極的のその責任を果たすことが宣言(沖縄感染症対策イニシアチブ)されたことをふまえ、感染症研究のあらたな基盤整備(感染症の先導的学術研究拠点整備事業:文部科学省学術機関課)を進めるという施策のもとで、2001年4月に立ち上げた遺伝子実験センターに感染症研究2分野(感染免疫制御分野、分子感染防御分野)が新設された。各々の分野において、「感染症に対する新しい免疫防御の概念確立と有効な感染防御免疫の誘導に関する研究」「病原体抗原の粘膜デリバリーシステムの確立と遺伝子組換え粘膜ワクチンの研究」をメインテーマに研究を進めている。また、同様に感染症研究の基盤整備がなされた九州地区2大学研究施設(九州大学生体防御医学研究所、長崎大学熱帯医学研究所)、千葉大学真菌症研究センターなどと連携して「感染症研究施設4大学連絡会議」を組織し、協力して研究を進める体制を施いた。一方、医学部でも既存の大学院医学研究科を2003年4月に改組し、大学院医学研究科感染制御医科学専攻(独立)を立ち上げた。本独立専攻科は、先進諸国や発展途上国が抱える感染症問題(新興・再興感染症、薬剤耐性、日和見感染症など)について生命科学を基盤とした先端医学的手法で研究し、感染成立・維持の分子基盤の解明、遺伝子レベルでの新しいワクチン戦略の確立、そしてそれらのトランスレーショナル・リサーチを通しての病態制御、治療薬研究などを進めることにしている。そして、医学部(医学研究科)と遺伝子実験センターが密接に協力して研究を進めるために「感染症研究拠点形成連絡会議」を立ち上げたところである。このように、本学は感染症に特化した研究を進めるための基盤的整備を着実に進めてきたと言える。
一方、国レベルでは文部科学省が特定領域研究「感染の成立と宿主応答の分子基盤」(領域代表 永井美之名古屋大学名誉教授)を2001年度に発足させ、年度ごとの研究経費が5億円前後という大型の研究プロジェクトのもとで本学からも多数の感染症関連研究者がこれに参加した。また、この特定領域研究の総括班には「若手研究者支援・育成委員会」が組織され、若手研究者の育成のためのプログラムの企画・実施を本学で担当することになった。2003年1月に第1回「感染症若手研究者沖縄フォーラム」が宜野湾市で開催されたのを皮切りに、毎年、全国から多数の感染症若手研究者を沖縄に招いて4回にわたる感染症沖縄フォーラムを開催してきた。この間、参加した若手研究者の数は延べ人数にして354名にのぼった。このフォーラムが沖縄で開催されることになったのは、上述したように2000年九州・沖縄サミットで先進諸国が一致協力して世界の感染症制圧に取り組むことを「感染症沖縄イニシアチブ」として宣言したことが本特定領域研究発足の契機のひとつとなったことに因むものであると同時に、わが国で唯一の亜熱帯環境下にある沖縄は感染症研究において重要な地域であることなどを挙げることができる。当該特定領域研究のもとでの若手研究者によるフォーラムは、本年度(第4回)のフォーラムをもって一応終了することになったが、引き続きこのフォーラムに参加した若手研究者が中心になって同様の若手交流の場を沖縄で継続して行こうという機運が生まれたことは、沖縄に感染症研究拠点のひとつを形成するという意味において歓迎すべきことである。また、本学がこの感染症特定領域研究のなかで得た研究資金は総額で81,500千円(若手支援経費を含む)にのぼる。
周知のように2004年には全国の国立大学は法人化され、新たな制度のもとで年度ごとに運営費交付金が交付されることになったが、そのなかで各々の大学法人が特色ある研究を進めるための新たな経費措置として「特別教育研究経費」が設けられた。2005年度には、感染症関連の教育研究のために総額で約32億円の「特別教育研究経費」が措置され、全国16大学・研究施設が3つの研究クラスター(基礎・応用医学研究クラスター;獣医学研究クラスター;臨床医学・疫学研究クラスター)に分かれて基礎的研究を推進する事業を開始した。本学は遺伝子実験センターの感染症研究2分野が中心となって臨床医学・疫学研究クラスター(長崎グループ)に参加し、この感染症研究の国内拠点施設のひとつに加わることになった。感染症研究のための本学への「特別教育研究経費」は、年度ごとに約50,000千円、5年間の交付が見込まれており、遺伝子実験センターの松崎吾朗教授を中心として11名の学内研究者が参加して活発な研究が推進されている。さらに2005年度からは、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、環境省などが連携して国外の研究拠点整備を含む「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム」が策定され、総額約23億円が計上されたが、ここにも2名の本学教員が参加することになった。
このように、国がラジカルに進める感染症研究プログラムのなかで、本学はそれなりのポジションを確保してきた。しかしながら、国が施策として進める感染症プログラムの予算規模に照らして、本学が得ている研究資金はまだ十分とは言えない。今後、本学がこれらの研究プロジェクトのなかでのプレゼンスを高め、さらに多くの研究資金のもとで活発な研究環境を確保して行くためには、感染症研究拠点としての本学のイメージアップをさらに図っていくことが大切である。
(文部科学省特定領域研究「感染の成立と宿主応答の分子基盤」
総括班「若手支援・育成委員会」担当 佐藤良也

 
 
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