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学長対談               

地方創生と琉球大学に求められる人材育成

2015年10月26日掲載


沖縄銀行取締役会長・沖縄県経営者協会会長

安 里 昌 利

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琉球大学学長

大 城   肇


・平成27年9月11日(金)沖縄銀行本店応接室にて

◇琉大ロースクールと沖銀のリーガル・アシスタント制

大城|本日はたいへんお忙しい中、時間をとっていただき、ありがとうございます。よろしくお願いします。

安里:こちらこそよろしくお願いします。

大城:まずはご報告とお礼を申し上げたいのですが、今年の司法試験に琉大から6名合格して、沖縄銀行のリーガル・アシスタント2名も合格しました。ご支援していただいた結果が出ました。

安里:わずかな生活費程度ですが、やはり企業が人材を育てるというのは非常に重要だと思っています。

大城:すごい励みになっています。

安里:まさかそこまで皆さんが頑張ってくれるとは思いませんでした。過年度も含めますと、これまでリーガルスタッフとして採用された19名のうち12名が合格しました。

大城:これは文科省からも、他の地域の法科大学院にはない良い取組だと評価を受けています。

安里:企業にとっても、優秀な人材が巣立っていったというのは非常にプラスになります。それともう1つ、リーガル担当として働いた者が難関をパスしたとなると、行員はいろんな資格試験にチャレンジしていますから、逆に皆の励みになっているんです。

左から 大城学長、安里会長

左から 大城学長、安里会長


◇沖縄の歴史に学ぶグローバル精神


(壁にかかった琉球王国大交易時代の進貢船帰国の図を見ながら)

大城:これは、今の明治橋あたりになるんですか。

安里:向こうが奥武山で、こういった船で、進貢だったり、貿易をやっていたというようなことで、その時の果敢な精神を、ぜひ我々も学ぼうということです。

大城:大交易時代は「津梁」(しんりょう:かけはし)という言葉をよく使っていますね。琉大は「知の津梁」と使わせてもらっています。知のかけはし。

安里:なるほど。しかし、本当に今でも全く通用するような表現ですよね。

大城:そうです。

安里:琉大は、そこを今しっかりやっておられる。

大城:あの時代の人たちはやっぱりグローバルですね。

安里:本当ですよ。しかも昔は技術も発達していませんから、台風リスクというのも負いながらやっていたんですね。

大城:そうですね。

安里:だから積極果敢にやって、多分1つの航海が成功したら膨大な利益が出たというような状況があったようです。ですから、リスクを冒して行ったんですね。

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大城:大交易会(注1)が文字どおりこれの現代版といいますか、具体化になってますね。

安里:第2回大交易会が、今年は11月26日(木)~27日(金)にあります。今、バイヤーの誘致、それと出展企業の誘致に動いてまして、バイヤーが150社、そのうち120社ぐらいが海外からの誘致で、30社ぐらいは国内の輸出商社が入ってます。出展企業は200社、これは北海道や青森からも全国33都道府県から参加します。

大城:すごい一大ビジネスセンターになりますね。

安里:各県ともそれぞれ特産品を持っていますので、あの国際物流ハブを上手に使ってもらって、そうすることによってあそこからどんどん成長していけばいいわけです。やっぱり沖縄の地理的な特性、有利なものをしっかりと生かさないといけないじゃないですか。地方創生ではないんですけれども、せっかくインフラとしてハブがつくられてますから、そこをしっかり生かすことによって地方が盛り上がるだろうと期待しています。

大城:そうですね。去年、九州の産学官のフォーラムを糸満市で行ったとき、地元の大学として出たんです。九電の会長さんとかが来られて、そのときのテーマが「九州は沖縄から何を学ぶか」だったんです。グループディスカッションをして、私のグループはなぜ沖縄は人口が増えるのかとか、観光客がなぜ増えているか、というところがすごい魅力として九州の皆さんに映っているみたいでした。

安里:なるほど。

大城:ただ、私としては、こういう面もあるが、例えば離島などは必ずしも人口が増えているわけじゃないし、厳しいところはまだありますよという話をいたしました。

安里:九州に九経連(九州経済連合会)というのがありまして、年に1回は沖縄と交流しているんです。その中で観光については、かなり沖縄に関心を持っていまして、伸び率だとか、観光客の数も多いもんですから、そこはぜひ連携しようという考えがありまして、意見交換をやっています。クルーズ船が沖縄だけに寄港するのではなくて、沖縄に来て福岡まで回ってもらうとか、そういったのをもっと商品化して連携できないかとか議論しています。その前は道州制がよく議論されたんですが、今、少しトーンダウンしているんじゃないですかね。今のところ、あまり道州制の議論はないですね。

大城:そうですね。もう地方創生のほうに話は移ってきていますね。

安里:地方創生法というのも、地方を元気にするひとつの大きなインパクトになるんじゃないかと思いますね。

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◇グローバル人材育成と学びなおし


大城:もともと沖縄の特性として、万国津梁の鐘にあるように、いやが上でも国際化と地域、ローカルとグローバルが表裏になっていると思っています。沖縄では表裏だから琉大の特性としても地域特性と国際性というのは両面だといつも言っています。

安里:そうですね。

大城:ですから地域貢献しようとしても、どうしても周りのアジアを巻き込まないといけないし、国際的な話をしようとしてもローカルと関係するというのはあります。

安里:やはりアジアに一番に近い関係で歴史的にも大交易時代というのがあったわけですから、その地理的な特性というのは、ずっと一緒です。 たまたまグローバル化、あるいは国際化がなかなか進まない中で、沖縄は東京から見ればローカル、海の彼方だという位置づけでしたけれども、アジアがこれだけ成長すると、一番アジアに近いという意味で沖縄の役割が非常に違ってきます。

私は大交易会に少しかかわっている中で、サプライヤーは基本的に英語がしゃべれないとだめだと感じています。大交易会当日は通訳を35~36名ぐらい準備していますが、通訳の皆さんというのは一般的なことしか話せないわけですよ。片言で発音は下手でもいいから、自分の商品を英語で説明できるようなレベルはぜひ必要だなと感じるんです。片言でいいから、あるいは訛りの入った日本語風の英語でいいですからしゃべりなさいと、だからそういう語学も研修しなさいということを言っています。

実は外国人観光客が、去年は57%伸びているんですが、外国人が国際通りに行っても、なかなか対応しきれてないわけですね。そういう意味で、グローバル人材は語学も含め、商談の仕方も大学の機能をぜひ生かしていただいて、経済界と連携してほしいと思います。

大城:英語で商談もできるグローバル人材が必要とされているということですね。沖縄銀行頭取の玉城義昭さん、それから沖縄経済同友会事務局長の比嘉正彦さんのご尽力で、「トビタテ!留学JAPAN」の地域人材コースも採択されて、グローバル人材の育成というのをすでにスタートしています。それから、もう1つやろうとしているのは、せっかく海外からの留学生が今、琉大に270名ぐらい、県内全体では400名ぐらい来ているので、今度は彼らを直接使ったほうがいいんじゃないかと。彼らは語学は問題ないので、さっきおっしゃったようなビジネスに必要な知識と、インターンシップなどをやりたいと思っています。

安里:人材育成も学び直しも必要だなというふうに思います。本当は我々の銀行の若手にも、学び直しのような形でお願いしたいんです。銀行員でも大学で学んだ後、実際、実務に就くと勉強しないといけないことがたくさん出てくるんですよ。例えば、統計学的なことも必要ですが、なかなか専門的に習っていなくて、これを大学のご専門の先生に講義してもらえればということもありますし、学び直しがどうしても必要になります。

大城:産業経営学専攻の方では、産業支援センターで社会人の学び直しのためのサテライト・イブニング・カレッジをやっておりますし、経済学専攻の方では政策評価について、今は行政の皆さんを対象に、大学院で政策評価のための統計分析とか政策論とかをやっています。

地域のニーズといえば経済界のニーズという部分は大きいです。ちゃんと地域のニーズを聞いているかというのは、例えば人材育成をやるときに、産業界がどういう人材を求めているかということに応えなければいけない。今回の留学生にビジネスに必要な知識の教育をして就職を支援しようという事業もそういうところがあって、こういう人材が沖縄で必要なので、その育成は国立大学の役割だということです。そういう意味で会長が以前、内閣府沖縄総合事務局のサービス人材育成に関わっておられましたが、それも実際、観光とか物流の人材育成として経済産業省の予算をもらうことができたんです。ああいう形で経済界のニーズに我々が応えて、このようなニーズが出ているから、こういう人材を育成したいというので予算をつけてもらう。そういう形で、今、少しずついい方向にまわっているかと思っています。

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◇沖縄の若者の気質


大城:1993年か94年ころに、当時の通産省の仕事で海外進出企業の調査をしたことがあります。日本企業の海外進出が盛んになったころです。そのときに大連に池宮印刷さんが、厦門に沖縄関ヶ原石材さんが行っておられたので、この2社を中心に調査しました。また、現地のJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)で、日本の企業がなぜ進出に失敗したかというところを、サクセスストーリーではなくて、例えば大連あたりは3,000社ぐらい入ってきて、その半分は撤退していっているという話があって、なぜ失敗したかというのをずっと聞き取りしたら、やっぱり人でした。

安里:パートナー?

大城:はい、パートナー。途中で制度が変わったという答えもあったんですけど、パートナーにふさわしい相手をちゃんとつかめたかどうかというのがありました。

安里:信頼できる相手かどうかですね。実は、沖縄の北谷町出身で、金城拓真君という若い人(33歳)が私のところによく出入りしているんですが、彼はアフリカのタンザニアで大成功しているんですよ。韓国の大学に留学していた頃にタンザニア出身の友だちができて、その友人から誘われて中古車の輸出をしたことがきっかけで、今やタンザニアでタクシー業、運送業、宝石業、建設業など幅広くやっています。彼は、進出した企業の成功率が5%だと言っています。あなたが成功している秘訣は何なのかと聞いたら、やっぱり彼の人柄というんですか、あまり儲けを追求してないんですよ。必要に応じて企業を広げていって、どちらかというと地元に喜ばれるような、地元のためにということでやったようです。これがビジネスが拡大するようになったポイントかと思います。彼は、タンザニアの貧困街に住んでいるようなんです。彼が歩くと、「金城、金城」って子どもたちが声をかけるというんです。やはり地元に受け入れられてビジネスも成功するんですね。

大城:これはさっきの調査のときに感じたのですが、池宮印刷も関ヶ原石材も、ある意味では地域密着型で受け入れられているところでした。沖縄から行った社員は寮で地元の皆さんと一緒に住んでいるんですよ。

安里:なるほど、とけ込んで。

大城:寝食も一緒にしているからすぐ意気投合して、技術を教えてもうまくいく。それがあるのかなと思いました。そのときに、沖縄の気質、沖縄の若い人がそうですけど、外国にあまり抵抗がなく、外国人と接するのはうまくできているんじゃないかと。

安里:そうですね。

大城:だから私は、うちの学生は国境は意識してない、琉大生はもともとグローバルですという話をしているんです。


◇大学と経済界の連携による島嶼国支援


大城:(資料提示)ご存じかもしれませんが、大学の類型化が始まりまして、大きく国立大学を3つに分けて、①が地域活性化の中核となって、また、特定分野で世界水準を目指す大学。②は特定分野で世界水準を目指す大学です。③は全学的に世界最高水準の教育研究を目指す大学です。

安里:①がやっぱり多いんですね。

大城:こちら側は地域貢献をするというところと、その大学の強みで全国あるいは世界でトップにいけるようにということで、実は琉大はあまりPRしてないんですけど、大きく言うと島嶼研究、海洋研究、健康・長寿研究、このあたりはかなり上位なんです。国内ではトップにいくことも可能だと思います。だから、そこは強みとして出しているんです。

安里:国立大学改革プランでいろいろ目指してもらっていますが、この中で学長のリーダーシップについても言及していますね。ぜひ我々としてもリーダーシップをしっかり発揮してもらえるような環境づくりをやっていただきたいです。

大城:私の性格的なものもあるかもしれませんが、リーダーシップといっても、トップダウンとはちがう。まず自分でアイデアを出して、それをみんなで共有して全員でいこうというような形です。ですから、琉大内で改革の方向性として、内部的に琉大創生プランというのをつくった。「創生」という言葉は政府が使う前に使っているんです。新しい建物にも地域創生研究棟と名づけたんです。その後に政府の地方創生という言葉が出てきた。あれはだから政府のほうがパクったんじゃないのという話です。(笑)

安里:そうですか(笑)。やっぱりベースにあるのは日本は少子高齢化に入りますし、それと財政も非常に厳しい環境にありますし、何よりも特に東南アジアの台頭で、総体的に地位が低下していますね。

大城:おっしゃるとおりです。

安里:そういう中で日本の活性化、日本をどう盛り上げていくか。やっぱり地方大学が非常に大きな力を発揮してもらいたいと思います。国立大学改革プランには、財政の充実、拡充、事業収益を明確にすべきだという項目がありますね。そういう観点で私が提案したいのが、JICAのODA支援への協力なんです。大洋州のパラオ、ミクロネシア、マーシャル諸島、トンガなど14カ国・地域がありますが、そこは島嶼国がほとんどですから、その事業は沖縄の企業でやってほしいというJICAの要請があるんですよ。それで3年前に水ビジネス検討会というのを立ち上げて、大洋州の水事情だけでなくて、エネルギー問題、環境問題を沖縄の島嶼性の技術を使って整備できないかということで、検討しているんですが、これを琉大と提携できないかと思っています。

大城:それは是非やりたいですね。第2回太平洋・島サミットを沖縄でやったときに、外務省からの要請で、環境関係の3社ほどを推薦したことがあるんですが、諸事情で実現しませんでした。今またお話が進んでいるのでしたら良かったですよ。

安里:太平洋・島サミットは7回やっていますが、そのうち3回は沖縄でやっています。この意味合いは、やはり環境が島嶼性という意味で沖縄と似ているからですね。沖縄の技術をODA事業に生かしたいということです。私達としては、琉大のご専門の先生方と連携して、そこで技術確立ができればと考えています。水ビジネス検討会は、経営者協会が事務局になって立ち上げていますが、相手は行政、国が出てくるわけです。けれども、こっちは民間だけですから県にも組織に入ってもらいたいのですが、なかなか進んでいませんので、国立大学が入ると大きな位置づけになります。これは国際交流にもつながっていきますし、また、例えば工学部の専門の先生と連携することになれば、当然そこに学生も入ってこないといけないです。学生もまた現地に行って活動する。そういった意味で、事業収入だけでなく人材育成にもなります。

大城:相乗効果がでますね。今、概算要求しているんですが、本格的にアジア・太平洋地域の拠点を形成しようとしています。琉大は太平洋島嶼国の大学とは、北マリアナ短期大学以外は交流協定を結んでいるんです。パラオとかミクロネシア、マーシャルなどは、大学も短大までしかないので、人材育成も含めてそこの短大を卒業した皆さんを琉大に引き受けて、できたら大学院まで行けるようなプログラムをやろうというのを提案しているんです。

安里:でしたらなおさら、ODA事業は国との親交、友好関係も築けますし、あるいはJICAの対外政策もプッシュできますし、いろんな意味で大学側に大きなノウハウ、可能性は秘めているのではないかと思いますね。これは今、大洋州ですけれども、いずれは東南アジアの新興国もマーケットになると思います。琉大と連携ができれば非常に強みですから、どこかでそういう検討をさせていただきたいと思いますね。

大城:わかりました。ありがとうございます。海外進出を経済界と一緒にやっていくのは、そのへんかもしれないですね。


◇改革の必要性


安里:学長は琉大を改革していい大学にもっていこうと努力しておられますが、私もバブル崩壊の真っ直中に9年間頭取をして、思い切った改革をやろうとしました。改革するときには必ず抵抗勢力がある。抵抗勢力があるというふうに思わないといけないです。私のときも、会議でもやっぱり否定的な意見がでました。そこを突破していかないといけないんです。苦しい局面ですけど、突破していかないといけない。最終的には、結果を出したら後でわかってくれるみたいことがありますので。

私が心配したのは、我々は公的資金を入れなかったものですから、どういうふうにして危機意識を浸透させるのかということがひとつの悩みでもあったんです。ですから、沖縄県はオーバーバンキングだということをわざと前面に出していました。オーバーバンキングの地域は統廃合が必ず出てくるんだと。そこで吸収される銀行になるのかどうか。そこをぜひわきまえろということで、それで危機意識を浸透させることができたところがありますね。

大城:私が琉大創生プランをつくったり、学長選のときに言っていたのは、変わらないと生き残れないということです。例えばハブでも脱皮しないと生き残れないでしょうという話で、改革をやるというのを旗印にしたら、たまたま学長になった25年度から大学改革加速期間と文科省が位置づけたものですから、ちょうどタイミング的によかったと思っています。


◇人材育成への期待


大城:最後に、琉大の同窓生として、大学に対する期待も含めて一言お願いします。

安里:大学改革プランというのは、ある意味では待ったなしで、日本の経済、日本の社会は非常に厳しい局面に来ているという見方ですね。少子化・高齢化の中で、あるいは海外からこれだけ押されていますが、大学が本当に大きく変わっていったら、民間までインパクトがあると思うんです。国立大学の中期目標・中期計画期間も第1期、第2期と進んで、また来年度から第3期が始まるということですが、幸いにもこの改革期に大城学長が登壇されて、琉大が大きく改革発展していくものと期待しています。その中で、私は経済界の1人として、大学と経済界がタイアップすることによってWin-Winの関係が築けると信じています。何よりもそこに人がいて、その人材をブラッシュアップするのが得意なのは地方の大学ですし、琉大は産業界や行政にもこれだけ人も送り込んでいますから、非常に大きく貢献すると思います。琉大に人材をつくりあげていただく、それが沖縄の大きな発展につながります。また、なかなか難しいところではありますけれども、我々は側面からバックアップしながら大学改革を応援したいと思いますので、学長のリーダーシップを発揮してぜひ頑張っていただきたいと思います。

大城:今日は長時間、たいへん貴重なお話をありがとうございました。



注意1:沖縄大交易会。食品専門の商談会、ビジネスマッチングイベント。全日本空輸、ヤマト運輸等のロジスティクスを活用した沖縄の国際物流ハブ化を促進することによって、海外での販路拡大の一助となることを目的に平成26年11月に第1回を開催。