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“亜熱帯特有”とっておきの知財(5)

自然から学ぶ(3):サルカケミカン(サラカチ)から抽出した抗腫瘍剤

平成24年1月17日掲載


1.肺がんの恐怖と沖縄の健康

現代人の死因の第1位はがんである。がんでの死者数は2009年の統計(人口動態統計:厚労省)では34万人超に上る。がんの中でも男性では肺がんが圧倒的に多い(図1)。女性でも徐々に多くなり最近では1位にひっ迫している。

沖縄ではその傾向が更に強く要注意である(図2)。肺がんはサイレントキラー(静かな殺し屋)と呼ばれる様に初期では殆ど痛みやその他の症状がなく静かに進行する怖い病気である。

2. サルカケミカン(サラカチ)から抽出した抗がん剤(特願2004-381320)

現在使用されている抗がん剤では主要な肺がん(例えば、非小細胞肺癌(扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌等))には効きにくくなっており、その対応の為に複数の抗がん剤を併用することが行われるケースが多くなっている。そうなると抗がん剤による副作用も自ずから多くなり、患者のQOL(Quality of Life)を低下させる。

琉球大学の屋宏典教授のチームは、サルカケミカン(サラカチ:図3)から有効成分の分離を研究してきた。その中で肺がん細胞は殺すが正常細胞には影響しない理想的な薬剤成分(12,13-dihydro-2,3-dimethoxy-12-methyl-(1,3)Benzodioxolo(5,6-c)phenanthridine :ジヒドロニチジン、図4)を非常な苦労の末に抽出した。

この薬剤の特徴は図5に示すように、がん細胞には強力にアタックし死滅させるが、正常細胞には対しては殆ど悪影響がない点であり、副作用の少ない新たな抗がん剤と言える。ジヒドロニチジンが特に効果を示すがん細胞は、肺胞上皮癌(腺癌)細胞、肺癌細胞、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、類上皮腫細胞、胃癌細胞、乳癌細胞等である。又、効果が期待されるがんとしては、例えば、肺癌、食道、胃、腸、小腸、結腸、大腸、口腔、咽頭、喉頭、乳房、子宮、卵巣、前立腺、精巣、膀胱、腎臓、肝臓、膵臓、骨、結合組織、皮膚、眼、脳、および中枢神経系の癌、甲状腺癌、白血病、リンパ腫、多発性黒色腫等が上げられる。

この特許は最近登録査定を受け特許権を確立した。今後はがん新薬として、開発する企業と共同して実用化に向けての研究を進めていきたい。

この特許に見られるように沖縄に生息する植物資源は極めて大きな可能性を有する。大学での研究範囲は限りがあるので、産業界や民間の方の「これは何だ?」や「これを飲んでいる(食べている)がいつも元気でいられる」などの経験や知見は研究を行っていく上で非常に重要な情報となる。そういう「とっておきの情報」があれば是非ご一報願いたい。そこからびっくりするような新薬ができるかもしれない。「瓢箪から駒」である。

国立大学法人琉球大学 産学官連携推進機構 知的財産部門 近藤義和
(TEL:098-895-8598 Email:kondoyos@lab.u-ryukyu.ac.jp)

※参考「琉球大学教員シーズ集」(http://www.u-ryukyu.ac.jp/coalition/kenkyu_kaihatsu/seeds/index.html )

図1: 人口動態統計(厚生労働省)より

図2:沖縄県における部位別がん死亡率の推移(沖縄県がん対策推進計画(平成20年度, 沖縄県福祉保健部)より)

図3: サルカケミカン(Toddalia asiatica)(沖縄植物図鑑より)

図4: ジヒドロニチジンの構造式

図5: ジヒドロニチジンの抗腫瘍効果, ●はA549肺胞上皮癌(腺癌)細胞), ○はWI-38(肺線維芽細胞(正常細胞))を示す.

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