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災害と予測

2016年07月19日掲載


今年は、熊本や大分を中心とする九州に自然災害が集中しているようにみえます。熊本地震で亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。大きな自然災害が起きるたびに、事前にその事象を予測(予知、予見)し、適切に事前対応できないものかと思うことがあります。


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私たちが生きている社会では、〔過去→現在→未来〕と時間は流れ、因果応報の事象が展開しています。未来は、文字通り「未だ来ぬ」世界です。時間が経つことによって変化が生じます。不可逆的に流れる時間ですが、地球上では四季のように巡り来るようにも感じられ、時間の質は変わっているはずですが、惰性に陥ってしまいます。

ところで、私たちの生活の中における「状態(状況)」を表す言葉についてみてみましょう。個人の状態を表すのに「元気」あるいは「病気」という言葉を使います。複数の個人の集合(社会)の状態を表すのは、場の空気といわれる「雰囲気」です。かつて、KYという言葉が流行ったことがあります。同様に、経済の状態を表すのに「景気」あるいは「不景気」、大気圏の状態を表すのに「天気」という言葉を使います。

すでにお気づきかと思いますが、共通しているのは「気」です。どうも昔の人は、個人レベルから天の状態まで「気」で捉えようとしていたようです。気の流れや気の状態を知ることによって、ものごとの状態を推し測り先読みする知恵は、人間も宇宙も同じ原理で捉えることができるという信念があったからなのでしょう。しかし、「気」そのものはみえません。

私たちは、先が見通せない不確実な世界に生きています。先行きが読めないので、迷いや不安が生じ、決断することが出来ない場合が多々あります。決断できたとしても、後悔したり悔やんだりすることはたびたびです。時には、占いやユタ(民間霊媒者)に頼ったりします。あるいは、動物たちの予知能力に脱帽することもあります。二昔前の映画「タイタニック」で本船が沈みかけたとき、キャビンの通路に殺到する人間の先を数匹のネズミが駆け抜けていくシーンが印象に残っています。水難の予知能力を持つネズミを登場させたJ.キャメロン監督の心憎い演出でした。


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ひと頃は、経済予測と天気予報は当たらないと言われましたが、衛星から地球を観ることによって、天気予報の精度はかなり向上しました。ITが発達した今日、消費者や投資家、企業の心理によって変動する経済の振る舞いもかなり的確に捉えることができるようになりましたが、気まぐれに動く経済行動の予測はまだ完璧とはいえません。この数年の出来事で明らかになったのは、科学が進歩したにもかかわらず、地震や津波の予測も完璧ではないことです。過去のデータに基づく予測手法の限界かもしれません。


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とはいえ、地震や台風、大雨などの自然災害が人間社会に与える被害は甚大なものがあります。私たち人間の予知能力を磨いて、先読みをしながら判断し行動することが望まれますが、実はそれは難しいことなのです。

もっとも、AIの開発が進めば、災害予測に限らず、人間の予知能力をAIがカバーしてくれる日が訪れると言う人もいます。いずれにしても、それまでは、私達は真摯な努力を重ね、決断するまで迷い悩み、悲喜交々の日々を愛おしみながら生きていくことでしょう。