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2018年 年頭挨拶

2018年01月04日掲載


1.年頭に当たって

明けましておめでとうございます。教職員の皆様には、2018(平成30)年戌年の清々しい新年をご家族お揃いで迎えられたことと拝察いたします。今年も皆様にとって佳き年となりますことを心から祈念してやみません。併せて、大学運営への皆様のご協力と頑張りに対して、心より感謝申し上げます。

2018年という年は、これまで歩んできた歴史の足跡を辿り、自らの根源を確認し、大地に根を張る年となりそうです。大学としては、第3期中期目標期間の3年目に入ります。私にとっては、任期最後の年としてこれまでの5年間を振り返るとともに、2050年の創立百周年までに本学が世界に光り輝く大学になることを見据えて、引き続き全力投球で邁進して参りたいと決意を新たにしております。教職員皆様の変わりないご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

2.昨年の振り返り

昨年は、平成28年度に係る業務の実績に関する評価に加え、7年に一度の認証評価がありましたが、各部局の皆様のご尽力により円滑に実施することができました。幸いにも、大きな改善を要するような指摘事項はありませんでしたが、落とし残しが散見されました。

これらの点を改善するだけでなく、他大学のモデルになるような仕組みづくりやGood Practiceの具現化に取り組み、その成果をルーティン業務として客観的に把握できるところまで引き上げることができれば、評価に基づく改善活動が無理なくいい形で回っていくものと思っています。すでに私たちにはその実績が蓄積されてきていると実感しています。

昨年も多くの取組がありましたが、詳細はホ-ムページやニュースレターに譲り、ここでは割愛いたします。

3.今年の展望

うれしい話として、平成30年度の沖縄振興予算案の中で、国際性・離島の特性をふまえた沖縄健康医療拠点整備費が新規に計上され、西普天間住宅地区跡地における医学部及び附属病院の移設計画が予算の裏付けのもとで動き出すことになりました。単なる病院の再開発を超えて、地域の人々により波及効果の高い取組となることを目指して描いた構想が、いよいよ現実になりつつあります。

一方で、最も古いビルである農学系総合研究棟の改修整備の予算化が、国の厳しい財政事情により新年度予算で見送られたのはたいへん残念なことです。本学は、千原キャンパスに移転して30数年が経過し、講義棟や研究室などが老朽化し、施設の機能改善が喫緊の課題の一つとなっています。今後とも、粘り強く要求し続けていきます。

本学のミッションの実現や課題の解決のためには、ヒト・モノ・カネの支援や交流も含めた大学資源の拡充と有効活用がますます重要になります。今年も、概算要求のみならず、外部資金の獲得や人的ネットワークの拡大を目指して、力を合わせて挑戦していきましょう。

4.世界的潮流をふまえた大学活動の展開

①協働型コモンズの共有型経済

情報通信技術(ICT)の急速な革新により、私たちの生活や経済社会の仕組が大きく変わろうとしています。『限界費用ゼロ社会』の著者であるジェレミー・リフキンは、コミュニケーション・インターネットと再生可能エネルギー・インターネットとロジスティックス・インターネットの三者が統合して単一の稼働システムとなって、21世紀の知的インフラを形成し、第4次産業革命を引き起こしていると指摘しています。

具体例を列記すると、IoT、ビッグデータ解析、AI、3Dプリンティング、MOOCs、スマートシティ、カーシェアリングや自転車シェアリングを組み合わせた統合交通供給サービス、GPS誘導自動運転車、Fin Tech、ドローン、(患者)参加型保健医療モデルなど、枚挙に暇がありません。

リフキンによれば、このようなICTに裏付けされた経済は、協働型(コラボレーティブ)コモンズで展開される共有型経済(シェアリングエコノミー)であり、資本主義型市場経済に取って代わりうる経済パラダイムの根本的転換を促しているということです。

そしてこの共有型経済の特徴は、知的財産権の縛りから解放されたオープンソースに接続することによって、協働型コモンズとして自由に協働してイノベーションや創造性を形成していく仕組みを作っていくことができることです。また、共有型経済では製品やサービスの生産量を1単位増やすコスト(限界費用)がほぼゼロになり、その製品やサービスがほとんど無料になることです。今日、インターネットに接続し様々なサービスをタダ同然で利用できることを考えると、まさにその通りだと思います。

リフキンの指摘で興味深いことは、「協働型コモンズは、所得格差を大幅に縮める可能性を提供し、グローバル経済を民主化し、より生態系に優しい形で持続可能な社会を生み出し、既に私たちの経済生活のあり方を変え始めている。」(訳書9頁)ということなので、共有型経済は資本主義型市場経済の負の側面を改善してくれる新しいパラダイムであるといえそうです。これまでの「欲しいものを欲しいだけ」という所有欲から、「必要なときに必要な分だけ」という共有意識への転換が起こり、徐々にモノやサービスを所有することよりもシェアすることに人々の価値が置かれるようになってきています。

②リフキンの警告

ここで、ものづくりに執着するあまり新しい未来のシステムづくりができない、日本に対するリフキンの警告をご紹介します。

「日本は今、歴史上の岐路に立たされている。もし日本が、汚染の根源、すなわち持続不可能な二〇世紀のビジネスモデルの特徴である、古いコミュニケーション・テクノロジーやエネルギー様式、輸送/ロジスティックスから抜け出せなければ、その将来の展望は暗い。実際、日本は急速に零落して、今後三〇年のうちに二流の経済に成り下がるかもしれない。だが、日本がもし時を移さず起業家の才を発揮し、エンジニアリングの専門技術を動員し、それに劣らず潤沢な文化的資産-効率性向上への情熱や非常に意欲の高い未来志向の活力を含む-を活かせれば、限界費用ゼロ社会と、より平等主義的で豊かで、生態学的に持続可能な時代へと、世界を導くことに十分貢献できるだろう。」(487頁)

③Society 5.0

ところで、日本政府は、「科学技術基本計画」を平成28(2016)年1月22日に閣議決定し、「人々に豊かさをもたらす『超スマート社会』を未来の姿として提起し、新しい価値やサービス、ビジネスが次々と生まれる仕組み作りを強化する」(1頁)として、世界に先駆けた超スマート社会、すなわちSociety 5.0の実現へ向けた取組を推進することとしています。それを受けて、内閣官房日本経済再生総合事務局が「未来投資戦略2017」を2017年6月に策定しています。Society 5.0の概念を内閣府総合科学技術・イノベーション会議の資料「Society 5.0実現に向けて」から引用することにします。

そもそもSociety 5.0とは、「狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、以下のような新たな経済社会をいう。

①サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることにより、

②地域、年齢、性別、言語等による格差なく、多様なニーズ、潜在的なニーズにきめ細かに対応したモノやサービスを提供することで経済的発展と社会的課題の解決を両立し、

③人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる、人間中心の社会」(1頁)であるとなっています。

補足すると、ネットワークやIoTをものづくりだけでなく様々な分野に広げ、経済成長や健康長寿社会の形成、さらには社会変革につなげていくこととされています。また、科学技術の成果のあらゆる分野・領域への浸透を促し、ビジネス力の強化やサービスの質の向上につなげ、さらに、サービスや事業のシステム化、システムの高度化、複数のシステム間の連携協調が必要とされるので、産学官・関係府省庁連携のもと、共通的なプラットフォーム構築に必要となる取組を推進することができるとされています。

④協働型コモンズとSociety 5.0の違い

ここで、ジェレミー・リフキンの協働型コモンズと日本政府の推進するSociety 5.0(超スマート社会)の違いを3点にまとめてみます。一点は、推進主体についてです。リフキンは、自らが消費するものの生産者となった消費者である生産消費者(プロシューマー)が主体となると考えるのに対し、日本政府は従来型の消費者、生産者、公的部門が推進すると暗黙に考えています。

二点目は、前提とする経済システムについてですが、リフキンは所有することからアクセスすることへ転換したシェアリングエコノミーを考えているのに対し、日本政府のSociety 5.0は私的所有権に基づく市場経済を前提としています。

三点目は、商品やサービスの価格について、リフキンは生産性の上昇や潤沢さによって、限界費用がゼロになり、価格は限りなく無料になると考えています。したがって、非営利活動につながります。かたや日本政府の場合は、希少性と応能負担に基づく有料の営利活動を前提としています。

どちらの仕組みが今後の経済システムになっていくかについては、日本政府版の超スマート社会を経て、リフキン版のシェアリングエコノミーに移行していくものと思われます。

⑤オープンソース化

21世紀の謳い文句の一つに、「ClosedからOpenへ」があります。これまでは、一企業の社内で閉じた形で研究開発を行っていたイノベーションしかり、学術研究にしても細分化された専門分野の中で閉じた研究をするスタイル・方法論が採られてきました。しかしながら、ICTが発達しネットワーク化が進展した協働型コモンズでは、オープンイノベーションやオープンサイエンスという形で多くのプレイヤーが参加するオープンソースシステムへと変化してきています。

囲い込みではなく、開放し共有することによって協働で成果を生み出し、その結果についても共有していく動きに変わりつつあるのです。これは、リフキンのいうシェアリングエコノミーの一側面ですし、琉大共創プランで強調する共創(co-creation)の精神にもつながります。

これまでの科学は、専門領域ごとに分割・細分化された分野において個別に研究するクローズトシステムの方法論がとられてきましたが、ネットワークを使ってオープン化することにより、集合知は一人の限界をブレイクスルーするような強力なツールとなりうるというのが、オープンシステムへの移行の理由として挙げられています。

オープンイノベーションやオープンサイエンスは、萌芽的なアイデアや成果を外部に公開しシェアすることがポイントであり、参加プレイヤーの集合知の活用によって、技術革新や学術研究を効率よく発展させていこうというコンセプトに基づいています。オープンマインドを持った人々を繋ぐことのできるバーチャルな空間が、オープンソースということになります。

これからの経済社会が協働型コモンズで展開されるシェアリングエコノミーに徐々に移行していくことを考えると、本学の教育・研究・診療のあり方もその動向を先取りしたものに変革していく必要がありそうです。その仕掛の一つとして、学内に産学官で先端学術研究特区としてOCIT(Open Center for Innovation of Technology or Okinawa Center for IoT、仮称)を設置し、そこを21世紀後半において沖縄県が進む方向のランドマークとする、というのが私の夢です。イメージ的には、仮称ですが、3Dプリンティングラボ、新教育開発ラボ、参加型保健医療ラボ、地域課題解決ラボなどが集積する学術研究ゾーンとする空間です。

この先端学術研究特区OCITは、国内外を問わず、オープンソースを基本にしたソーシャルネットワークゾーンとし、ゆくゆくは沖縄全体をアジア・太平洋地域におけるオープンイノベーションやオープンサイエンスの拠点となる特別自治州にすることができればと夢みているところです。

5.むすびにかえて

本学は、特色ある教育研究成果をベースに地域貢献型大学として発展していく途を選択しました。このミッションを設定し、大学教育の質と研究水準の向上に邁進して、有為な人材の輩出、学術研究の発展及び産学官連携による様々なネットワークを活用した地域・国際貢献に資する取組を実践することによって、地域から信頼され頼られる大学となることを目指しています。そのためには、時代の大きな流れを適切に捉え、その流れに乗っていかなければ、後塵を拝することになります。

以上で述べたことは、新年に当たって考えたことです。それはうたた寝の夢のごとく実現性の低い直感であるかもしれません。他方で、夢は思いつきやアイデアを具体的な鋳型に変えてしまう変換装置でもあります。取るに足らない空想を具現化することによって、人々に感動を与えることのできる大きな夢とすることもできます。本学には、夢を現実に変える力があると信じています。県民、そして国民に感動を与えることのできる夢の実現へ向けて、新しい戌年もともに頑張って参りましょう。どうぞよろしくお願いいたします。